公的制度・社会資源の活用
心臓病を発症することによって少なからぬ経済的な負担が新たに生じたことを多くの人々が語っていました。ここではそうした負担を軽減するための公的制度や社会資源の活用についての語りを紹介します。
医療費を支援する制度
インタビューに協力してくれた人たちは医療費負担を軽減するために、公的医療保険の高額療養費制度、難病認定、障害者手帳の取得、生活保護制度の医療扶助という、概ね4つの制度を利用していました。
公的な医療保険には医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、超えた額が払い戻される「高額療養費制度」があります。上限額は年齢や所得によって定められています。
心臓病の治療のようにあらかじめその月に払う医療費が限度額を超えることが見込まれる場合は、加入している公的医療保険に申請して「限度額適用認定証」を交付してもらえば、窓口で払う医療費を自己負担限度額までに抑えることもできます。
急な入院や緊急手術などで認定証を事前に申請できなかった場合などは、無利子で自己負担割合を貸し付ける高額療養費貸付制度を利用することもできます。
さらに難病の人の医療費の負担を軽減する制度として、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)に基づく医療費助成制度があります。
医療費の自己負担額3割が2割に引き下げられるほか、外来・入院の区別を設定しないで、世帯の所得に応じた医療費の自己負担上限額(月額)が設定されます。
指定難病の医療費助成を受けるには、特定医療費(指定難病)受給者証が必要で、難病指定医が作成した診断書を添えて、都道府県・指定都市の窓口に申請をします。
心臓の機能の障害によっては、身体障害者福祉法に定められた、障害認定(障害者手帳の交付)を受けることができる場合があります。
身体障害者手帳では障害の種類や日常生活で支障をきたす程度に応じて障害を1級から7級に分類していますが、心臓の場合は1級、3級、4級に区分されます。
自治体によって異なりますが医療費の助成や自立支援医療(更生医療)の給付を受けることができる場合があります。
自立支援医療(更生医療)は、身体障害者手帳を取得した人が手術等により障害症状の改善を希望する場合、市町村に申請し、指定自立支援医療機関において行われるもので、医療費の自己負担は原則1割になります。
手術等の治療によって、障害を除去・軽減する効果が確実に期待できるものに対して提供されるもので、該当する疾患や治療法が定められていて、ペースメーカの埋込みはその対象となります。
生活保護制度を利用すると国民健康保険の被保険者になれないため、医療費は自己負担分を含めて全額医療扶助で負担されます。
生活費を支援する制度
心臓病を患う人の中には、手術などの治療を受けて早期に仕事に復帰できた人もいましたが、入院治療が数か月に及び、退院後にさらに長期の療養を必要としたり、医師から発症前の仕事に戻ることを止められたりするなど収入に影響した人たちもいました(「仕事とのかかわり」もご覧ください)。
ここでは、生活費を支援する制度のうち、被用者保険の傷病手当、障害年金、生活保護の利用についての話を紹介します。
傷病手当は、療養中に被保険者と家族の生活を保障するために設けられた健康保険の制度です(詳しくは協会けんぽ「傷病手当金について」を参照)。勤務先で健康保険に加入していれば申請によって、休業4日目から1年半まで標準報酬額の2/3の手当金が支給されます。なお、制度の趣旨により、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。自営業者や個人事業主、フリーランス等が加入する国民健康保険には、原則的に傷病手当金がありません。
障害年金は公的年金制度が、現役世代の所得保障も行う仕組みです。障害年金を受け取るには、初診日における年金制度加入の状況、障害認定日における障害の状態など、一定の要件を満たす必要があります。
障害の状態は日常生活や労働の制限に基づき、1級から3級に認定されます。
病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していて、1級及び2級に認定された場合は「障害基礎年金」を、厚生年金に加入していて、障害等級が1級及び2級の場合は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」、3級の場合は「障害厚生年金」のみを受けることができます。
生活保護は、生活に困窮するすべての国民に対して、憲法25条に基づき国が最低限の生活を保障する制度です。
健康保険や障害年金など、他の制度による給付が優先され、資産や能力など利用可能なものを活用したうえで、なお不足する部分を補う仕組みです。
申請があるとケースワーカーが受給要件を調査し、保護開始後も訪問などを通じて世帯の生活状況を把握し、必要な支援を行います。
制度に関する情報へのアクセス
心臓疾患の治療や心不全と共に生きるに際し様々な制度を利用した人は、その情報をどのように得て、どのような手続きを経て支援にたどり着いたかを語っています。
情報の入手先として最も多く語られたのは治療を受けた病院でした。何人かの人がインターネットを利用して自ら情報を得ていました。他に障害者支援センターや福祉事務所の支援について話した人がいました。
高額療養費については、殆どの人が入院中に病院のスタッフから説明があり、手続きをすることによって窓口負担が少なくて済んだと話しました。
障害者手帳の取得について病院で情報を貰ったと話した人たちもいました。心サルコイドーシスで障害者手帳の申請をした人は、親身になって相談にのってくれていた看護師が調べてくれたことで、申請可能だとわかったそうです。
障害者手帳の取得や難病認定についての医療機関からの情報提供は、不十分だと感じることもあったようです。
社会的な資源の利用につながることができたのは、たまたま巡り合った医師や病院のおかげだと話す人たちも少なくなかったです。
心疾患を発症する前に別の理由で障害認定されていた人は、福祉事務所や福祉センターから手帳の取得や障害者雇用に関する相談や支援を受けた経験を話してくれました。
インターネットの情報で治療法によって障害認定が変わることや、障害厚生年金がもらえそうなことを知った人もいました。
障害者手帳
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法によって定められた障害の種類や程度に該当すると認められた場合に、自治体によって交付されるものです。
心臓の障害で身体障害者手帳を取得するには指定医の診断を受け、診断書を記入してもらうことが必要です。手帳を保持することによって医療費の助成の他にも、障害者総合支援法に基づく福祉サービスや税金面での優遇、公共料金や公共交通機関の割引などのサービスを受けることができます。
また、就労についてのサポートを受けることができます。
受けられるサービスは障害の等級や所得が関係し、住んでいる自治体によって異なります。
次の人たちは身体障害者手帳による公共交通機関の割引やタクシー代の割引について話しています。
心臓の障害で身体障害者手帳を取得するには指定医の診断を受け、診断書を記入してもらうことが必要です。心臓病で身体障害者手帳を初めて取得した人の多くが、治療を受けた医療機関で取得を勧められたそうです。中には、障害者と認定されることに対する抵抗があったと話した人もいました。
身体障害者手帳の障害分類の中には、肢体不自由のように外見上障害がわかるものもあります。また、視覚・聴覚などの障害は、お付き合いすることで不自由さがわかることもあります。
これに対して内部障害は周りに気づかれにくい障害と言えます。心不全は日常での活動制限は様々ですが、外から見えないことで必要な配慮を受けられないこともあるようです。
周りに認知してもらうために認定は受けるべきと話す人もいました。
基準の見直しがあり、以前と比べて障害者認定が厳しくなっていることについて複数の声が聞かれました。昔、大動脈弁閉鎖不全症で人工弁置換術を受けた人がその状況について話しています。
ペースメーカについては、平成26年4月に「心臓機能障害(ペースメーカ等植え込み者)」の障害認定基準の見直しが行われました。
医療技術の進歩等により、社会生活に大きな支障がない程度に日常生活能力(ADL)が改善している方が多いことが理由とされています。
平成26年4月以前にぺースメーカを装着した人は一律1級に認定されていますが、それ以降は心臓機能を維持するためのペースメーカや体内植え込み型除細動器への依存度、日常生活活動の制限の程度を勘案して1級、3級又は4級の認定を行い、3年以内に再認定することとされました。
詳しくは厚生労働省HPの「心臓機能障害の認定基準(ペースメーカ等植え込み者)の見直し案の具体的内容について」をご覧ください。
障害認定の問題は、患者会でもぎくしゃくすることがあると話しました。
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。

健保組合に限度額適用認定証 を申請し、高額療養費制度を利用した。本来払うべき医療費は200万以上なのが12~13万で済んだ
先天性の心疾患で障害者手帳3級を持っている。今住んでいる地域は手帳があるので治療費の上限が月600円で収まる
年金制度上の障害等級で3級が認定され、老齢厚生年金をもらうまでの短期間だが障害厚生年金を受け取ることができた
高額療養費についてナースからすぐに必要になると言われ、事務の人から詳細を説明してもらった。傷病手当も今手続きしている
心臓ではなく膝の問題で身体障害3級の認定で、タクシー利用券が支給されるほか、手帳を見せるとタクシー代が1割ぐらい安くなる
障害認定を受けることには、初め抵抗があった。障害者というと一般からかけ離れた見方をされる場合もあった
障害者手帳を取ることは社会の人に自分の状態を明らかにすること。理解してもらい周りを変えてゆくためにも取った方がよい
ペースメーカを入れても4級しかとれない人もいる。自分は昔から入れているので元気でも1級のままで、おかしいと思う
