医療者とのかかわり
ここでは、医療者とのかかわりの体験を紹介します。
心不全は多様な経過をたどります。インタビューでは急性の心臓病の治療の体験をした人がいました。きっかけとなった心臓病の治療が行われた後、長い経過を経て心不全に至った人たちもいました。
医療者と関わった場面も多様で、手術を行った心臓病の専門病院、急性期治療を行った病院、ICU、術後のリハビリ病院、治療後の長い経過をフォローアップした病院やクリニックがありました。
かかわった専門職も入院した病院の医師、看護師、リハビリ専門医、退院後の栄養指導を行った管理栄養士、療養生活を支えた訪問看護師やヘルパー、ペースメーカのチェックを行う臨床工学技士などと多様でした。
病状の説明
インタビューでは、病状や治療法、今後の見通しについての説明を受けることが、医師とのかかわりの重要な部分を占めていました。
医師の説明は数値や医学用語、わかりやすいたとえ話を用いてさまざまになされていました。図を用いて説明されたと話した人もいました。
多くの人にとって、医師の説明がそのまま自身の病状理解となっているようでした。一方で、詳しいことは聞いていない、知りたくないと話した人もいました。
先天性の心臓疾患の治療後長く診察に通っていたが人が、20歳になった時に初めて心臓の状態や今後の見通しについて説明された内容について話しています。
次の人は、医師からわかりやすく説明してくれるが、信頼し任せているので、それ以上詳しいことは知りたくないと話しました。
治療の決定場面
インフォームドコンセントが定着した今日、医師は、患者が治療法や自身の今後の生活を自ら決定できるよう丁寧に説明するものと考えられています。
命にかかわることも多く、治療はしばしば緊急を要することがある心臓病の患者は、医師の説明をどのように受け止めているのでしょうか。
インタビューでは医師の説明を、患者の意思決定のための情報の提供というより、治療に同意し、日常生活の行動変容を求めるものとして受け取った様子も話されていました。
緊急を要する治療では、家族が同意書に署名することを求められますが、専門用語が多く、医師を信用するしかなかったと話した家族もいました。
次の人は弁形成の手術を受けるまでの経緯について、医者に言われるまま話が進んだと話しました。
次の人は、僧帽弁閉鎖不全でいよいよ手術が必要になったことを、医師とのコミュニケーションから察知したと話しました。
40年前にペースメーカの植え込み手術を受けた人は、当時は殆ど説明がなかったと振り返りました。
今は心臓病でもインフォームドコンセントの実施が定着しているようです。
インタビューでも、最近の治療を受けた人は、医師の説明に納得して治療法を選んだ経験や、自らの意思で治療を受けた経験、受けなかった経験を話しました。
本人ができない術中の同意を、家族が求められたと話した人もいました。
次の人は、大動脈閉鎖不全で手術が必要になったとき、医師から複数の術式を提示され、詳しい説明を受けて自分で決断した経験を話しています。
次の人は先天性心疾患で長年医師と関わってきましたが、治療の選択は自己責任と考えており、医師も容認してくれたそうです。
患者が治療の選択をするにあたり医師がすべての選択肢を提供することが大切だと言われていますが、かえって動揺させられることもあるようです。
次の人は、留学を控えて僧帽弁形成術を受けることを決めていたのですが、留学後に伸ばすという選択肢があると言われて動揺したと話しました。
人と人としての医療者との関係
心臓病は生命の危機に直結することもあり、また、長い間医療機関に通い続けることが求められることもあります。
インタビューでは患者と医療者の関係はより幅広く、深くなることが伺えました。
ここでは、医療者と患者が同じ一人の人間として尊重し合う、医療者への期待や感謝の語りを紹介します。
次の人は、入院生活の中で、心臓リハビリの理学療法士との交流が一番記憶に残っていると話しました。
次の人は、医療者が同じ一人の人間として関心を持ち親身になってくれたことで心が動かされた経験をしました。
医療者と患者も時には家族や近しい友人のような親密さがあれば、治療においてもよい状態が生まれるのではないかと話しました。
ペースメーカの患者会を運営している人は、ペースメーカを入れた当初は、密にコミュニケーションをとれるということはなく、医師と患者は上下関係だったと振り返りました。
次の人は、妊娠中に感染性心内膜炎を起こして出産を断念したときの、医師と患者のかかわりの機微について話しています。
支えとなった医療者の対応
医療者とのかかわりが、病状の経過に影響を与えたと話した人たちがいました。
20年前に拡張型心筋症と診断され、知人が亡くなった経験が影響して、症状に苦しみながらカテーテル検査を拒否し続けていた人は、検査を受ける決心につながった看護師のかかわりについて話しました。
手術の際の病理医の専門職としての判断が、その後の運命を変えたと話した人がいました。
不調を感じて受診した近くの診療所が、循環器内科を専門にしていたことはラッキーだったと話した人がいました。
看護師さんの慰めの言葉で、生きているのが辛い状況を何とか乗り越えることが出来たと話した人がいました。
心筋梗塞から心不全になり生活に様々な制約を受けることになった人は、医師の言葉の選び方や看護師の接し方で、明るい気持ちになることが出来ると話しました。
次に紹介する人は、検査値だけを見て直接からだを診察されないことが不安だったので医師を変えたそうです。
患者としてできること
インタビューでは、医療者と患者の関係における患者自身のあり方についてさまざまに話されていました。
診てもらうときは医師を信頼して、自分の状態を細かく話した方が良いと話した人がいました。些細なことで医療機関を変えたことを後悔したと話した人もいました。病歴が長い人は、医療機関を変えると過去のデータが生かされないので、同じドクターに見てもらっていると話しました。
次の人は、自分に合う医療者にかかることが重要と話しました。
次の人は、合併症は一定の確率で起こるが、それを乗り越えるのは信頼関係であると話しました。
次の人は、患者が医療者とよい関係性を築くにはどうすればいいのかについて話していました。
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詳しい説明は20歳で初めて聞いた。予後については医学的にも不確定な部分はあるが悪化しないよう診ていきましょうと言われた
手術を勧められても半年間は流していたが、先生は本気なんだと気づいた時は、やるしかないと思った
自分がペースメーカを入れたときには「入れなきゃ駄目だよ。だけど大丈夫かはやってみないとわからない」と言われ不安になった
症例数は少なく難易度も上がるが、その術式を選ぶメリット・デメリットを理解して、David手術を自分で選んだ
医師の示した選択肢に動揺したが、「先生が今の私だったらどうします?」と質問して、その答えが選択の決め手になった
出産を断念して産科から心臓の病院へ戻ったとき、心臓の主治医に会いたいような会いたくないようなもやもやした気持ちだった
循環器内科を専門にしている診療所で、速やかに診断してもらい、腕のいい専門医のいる病院に紹介された
結果がよかったので何も言わないのかもしれないが、ちゃんと診察して「大丈夫だよ」だと言ってくれた方が安心する
患者も知識を得て、よいコミュニケーションを工夫すれば、よい関係が築けて、よい治療を受けられ、いい生活が出来るようになる
