放射線療法(外部照射療法)

放射線療法には、体外から照射する外部照射療法と、放射線源を体内に挿入して直接照射する組織内照射療法(放射線療法(組織内照射法)をご覧ください)とがあります。外部照射療法には、転移のない前立腺がんに対して根治を期待して行うものと、骨転移などによる痛みの緩和や骨折予防を目的として行うものがあります。ここでは前者の、確定診断のときには転移がないと判断され、根治を期待して外照射療法を受けたという人たちの語りを紹介します。

リニアック(二次元照射)・三次元原体照射(3D-CRT)・IMRT(強度変調放射線治療)

一口に外部照射療法といっても、使用する装置や放射線の種類によって、いろいろな方法があります。これまで、わが国で最も一般的に用いられてきたのは、リニアックという装置で、体の外から患部である前立腺に向けてX線を照射するもので、二次元照射、従来法の外部照射とも呼ばれています。最近では、同じリニアックでも、複数の方向から前立腺の形に合わせて放射線を照射し、前立腺に放射線を集中させる「三次元原体照射(3D-CRT)」という方法や、これを発展させた、多方向からの照射に加え、コンピューターによって照射する放射線に部分的に強弱をつけ、より高い精度で放射線を集中させるという「IMRT(強度変調放射線治療)」と呼ばれる方法が多く用いられるようになってきました。
これらの治療法を受けた人は、体にかかる負担や、治療後の後遺症が手術と比べて少ないと言われていること、高い放射線量を照射できる場合は、手術と同じように根治が期待できることを、選択した理由として挙げていました。どの方法で照射するかは、がんの状態によっても判断する必要がありますので、IMRTを強く希望していたけれど、医師から三次元原体照射の方がよいと勧められたという人もいます。

また、前立腺全摘除術の後、浸潤やリンパ節への転移が見つかった場合、補助的に外部照射療法が用いられることがあります。

リニアック(従来法)・三次元原体照射(3D-CRT)・IMRT(強度変調放射線治療)の実際

どの方法でも、治療計画に基づいて放射線を分割照射していきます。放射線という言葉を聞いて原爆症をイメージし、最初は不安を感じたという人や、機械のいかめしい感じに少し驚いたという人もいましたが、照射自体は、痛くもかゆくもなかったという人がほとんどでした。放射線を当てるための体に引いたマーカー(ライン)を消さないように、治療が始まった当初は、かなり気を遣ったと話す人もいました。IMRTを受け、治療後も経過は順調だと話す男性は、IMRTをとても楽な治療法だったと話していましたが、治療後PSA値が徐々に上がって、新たな治療を受けなければならなかったという男性は、自分の場合はIMRTを受ける前に、全身麻酔で金マーカーを前立腺に入れ、リンパ節切除を受ける必要があったので、そうするくらいなら、全摘手術にした方がよかったかもしれないと今でも悩んでいる、と話していました。

重粒子線・陽子線治療

粒子線を用いた治療もあります。狙った位置で最も強く作用するように調整して照射できるため、患部に大きな線量を照射できる一方、周囲の組織への影響は軽減することができると言われています。わが国で行われている粒子線治療には、「陽子線治療」と「重粒子線治療」があります(国内で実施可能な医療機関は限られています)。今回のインタビューで、この治療を受けた人たちは、早期の前立腺がんと説明を受け、性機能も含めて、後遺症が少ない先進的な医療であると聞いたからとか、「あなたの状態ならば根治出来る可能性が高い」と医師から言われたからと、選択の理由を話していました。

重粒子線・陽子線治療の実際

これらの方法でも、治療計画にそって、分割して照射を受けることになります。ほとんどの人は照射中には、苦痛はなかったといい、時々居眠りしてしまったと話す人もいました。治療期間中、便秘にならないよう緩下剤を飲んだり、治療前に膀胱に塩水を溜めたり、照射中じっとしていることが多少つらかったと話す人もいましたが、慣れてしまえばたいしたことはなかったと話す人もいました。

ホルモン療法と組み合わせて受ける

外照射療法は、ホルモン療法と組み合わせて行われる場合もあります。ホルモン療法を先に受ける場合もあれば、並行して受ける場合もあります。診断を受けたときに、ホルモン療法しか治療法の選択肢がないと聞かされていたという人は、外照射療法が受けられてよかったと話していました。

通院で受けるか、入院で受けるか

外照射療法は、いずれの方法でも2週間から1ヶ月以上の、比較的長期にわたる治療期間が必要です。安心のために入院して受けたという人もいましたし、仕事を続けながら通院で受けたという人もいました。通院のために定期券を買ったという人もいます。副作用を心配して、最初数回だけ入院するように促され、途中から通院に切り替えたという人もいます。全摘除術後に通院で放射線治療を受けたという人のなかには、体がとても辛かったので、入院して受ければ良かったと話す人もいました。また、このインタビューで重粒子線治療を受けた人たちは全員、入院治療が原則だったと話していました。治療による負担が軽いため、週末は自宅で息抜きをしていたという人もいます。

外部照射療法にともなう、困った症状と治療後の生活

外部照射療法は、照射の仕方や装置にもよりますが、後遺症として排尿・排便障害などが出る可能性があると言われています。このインタビューでは、放射線治療を開始してほどなく(照射中~照射後3ヶ月以内)出る症状として、頻尿で一日15回もトイレに行きたくなり、外出の時に困ったという人もいましたし、尿の出にくさや、頻便や排便痛、血便、肛門の痛み、体のだるさを口にする人たちもいました。一方、こうした症状はほとんど出なかったという人もいます。

放射線治療を受けて3ヶ月以降、場合によっては数年たってから後遺症が出現することもあります(これを晩期障害といいます)。三次元原体照射を受けて2年後、直腸からの出血があったという人もいました。ある男性は、いつ出てくるのか分からない不安があると話していました。

また、性機能に障害が出る場合もあります。IMRTを受けた男性は、精液の量がかなり減ったと話していました。一方で、性機能にはほとんど問題を感じていないと話す人もいました。

放射線治療の効果は、時間をかけてゆっくりPSA値にあらわれると言われています。治療後、PSA値がなかなか下がらず、不安に感じたという人もいました。放射線治療後のPSA値の動きについて、事前に知っておいた方がよいと話す人もいました(「治療経過にともなうPSA値の変化」参照)。

治療費用について

重粒子線・陽子線は2018年に、IMRTは2008年に保険診療の適用になりましたが、それ以前の先進医療に位置付けられていた時期には、関心は持っていたけれど、とても受けようとは思えなかったという人、治療を実際受け、高額の治療費が一番の副作用だったと話す人がいました。

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