乳がんと遺伝

乳がんを発症した人のうち5-10%の人は、遺伝的な要因が関与して乳がんを発症したと考えられています。残りの多くの人は様々な環境因子が複雑に影響し合って乳がんを発症していると考えられています。遺伝的な要因の中でBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子の生殖細胞系列の変異(※)がある場合、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome:HBOC)と診断されます。この遺伝子は男女関係なく親から子へ50%の確率で受け継がれていき、乳がんや卵巣がん、前立腺がんなどを発症する可能性が、一般的な可能性より高くなります。しかしBRCA1やBRCA2遺伝子の遺伝子変異を持っているすべての人がこれらのがんを発症するわけではありません。遺伝子検査の結果は、「今後発症するかもしれないがん」の予防や健康管理に活用されるほか、「現在発症してるがん」の治療方針の検討に活用されることもあります。(遺伝性乳がん卵巣がん症候群について詳しくはこちらを参照)。

※個体を形成するすべての細胞に共通して存在し、遺伝情報として次世代に伝えたり、血縁者と共有していたりする可能性のある変異のこと

今回のインタビューでは、遺伝子検査を行った人は1名のみでしたが、他の人たちも自分が乳がんになったことや家族内に複数の乳がんまたはがんを発症した人がいることで、「遺伝」や子どもたちに体質が引き継がれることへの心配について語っていました。

今回、インタビューを受けた人の中で、遺伝子検査を受けて、遺伝性であることがわかった人は、ショックというより納得したと話していました。

遺伝性であるということは、血縁者すべてに遺伝するわけではありませんが、当然、家族や血縁に影響を及ぼします。この人の家族はそれぞれに結果を受け止めたようでした。

誰から受け継いだ遺伝であるかによっては、その当事者はさまざまな思いを抱くことが考えられます。この人は父方からの遺伝だったため、父親との関係に距離ができてしまったことを話しています。

この女性は遺伝性のがんを患っていることで将来の結婚や出産について次のように語っています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断されたあと、一つの治療法として、健康な乳房や卵巣をがんの発症を予防するために切除をすることがあります。2020年度より乳がんや卵巣がんになり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断されて予防的切除手術を受ける場合、公的な医療保険が適用されることになりました。この人は、予防的切除を行わず、検診を定期的に受けることにしたと話しています。

2020年1月更新

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