乳房切除術

乳がんの手術の術式には大きく分けて、がんのできた側の乳房を全部切除する手術(乳房切除術)としこりとその周辺の組織のみを切除する手術(乳房温存術)があります。ここでは乳房切除術に関する語りを紹介します。乳房切除術は、かつては胸の筋肉まで取ってしまう方法(ハルステッド手術)が主流でしたが、現在は筋肉を残して乳腺とリンパ節を切除する方法(非定型手術)が主流となっています。なお、リンパ節の切除についてはリンパ節郭清とセンチネル生検をご覧ください。

非浸潤性乳管がんは、乳房内に拡がる可能性はあるものの、転移する可能性はほとんどありません。病期で言えばごく初期のがんですが、乳房さえ切除すればほとんど再発の危険がなくなるので、かつては主に乳房切除術の適応となっていました。現在は手術で切り取った切り口にがんがなければ(組織学的に断端陰性であれば)、乳房温存療法が標準治療として勧められています(日本乳癌学会編2015年Web版ガイドライン「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン外科療法」)。私たちのインタビューでは、温存術を勧められたが、乳房内再発を避けたいという思いからあえて乳房切除を選んだ人がいました。

手術の実際

入院期間については多くの人が1週間から10日程度だったと語っていましたが、両側の乳房を同時切除した人や同時再建をした人はもう少し入院期間が長くなっていました。また、胸から体液を排出するためにドレーンという管からの感染で、入院が長引いた人もいました。手術前に投与された麻酔薬の痛みを感じたと話す人や先天性のろう者として手術室の中で聞こえない不安について語る人もいました。

手術後は、目覚めてから息苦しさや吐き気、腰やかかとの痛みを感じて辛かったという声もありました。術後の痛みは個人差がありますが、痛み止めである程度抑えられます。以前に婦人科等で開腹手術を受けたことがある人は、比較的楽な手術だと思われたようです。

退院後の生活については、多くの人が余り時間をおかずに日常の生活に復帰しています。病院から帰ったその日から家事を始めた人や、2~3日で職場復帰した人もいます。一方、入院中にドレーンを抜いた後の傷痕からリンパ液が滲出し続けて不安に感じたという人もいました。

乳房切除後の傷痕について

外見の変化が本人の女性としての意識に及ぼす影響については別項(からだ・心・パートナーとの関係)にまとめましたので、ここでは傷痕そのものに対する思いについての語りをご紹介します。手術直後に傷を見たときの語りと半年から1年以上経ってからの傷についての語りでは、その思いはかなり違っていました。

夫や恋人などのパートナーや子供に傷痕を見せることについては、別項(からだ・心・パートナーとの関係家族の思い・家族への思い)で触れていますので、ここでは温泉などで、胸が見知らぬ他人の目に触れることについての語りを紹介します。傷痕を隠さずに入ることにした人もいれば、シリコンなどでできた人工乳房を装着したり、専用のカバーを使ったりしている人もいました。

また、着衣の時の対応については、乳房切除をした人のための専用補整下着を利用している人もいましたが、普通のブラジャーにタオルを折って入れたり、スポーツブラを使ったり、下着を自作したりと、独自の工夫をしている人もいました。

こうした外見的な問題のほかに、術後しばらくたってからも傷痕の痛み、感覚異常などが持続する後遺症の問題があります。

このほかに「腕が上がらない」「腕が腫れる」といった症状もあります。これらについては術後後遺症とリハビリテーションリンパ浮腫をご覧ください。

2018年12月更新