教職員や支援者との関係

障害のある学生の学生生活には、直接授業を担当する教員や、大学の事務職員、障害学生支援部署の職員、他にも、通訳やボランティアなど、多くの大人がかかわります。インタビューに答えた人には、その人と出会いが大きな意味を持ったことを話した人もいますし、頼りになりそうな人を探したという経験を話した人もいます。また、逆に思ったように関係性が作れなかったと話す人もいました。

人生に影響があった出会い

障害とは関係なく、大学時代は、その後の人生に大きな影響を与える出会いがあることがあります。通信制の学校で学んでいた視覚障害の男性は、たまたまスクーリングの際の試験監督だった教員との出会いについて、話していました。

キリスト教系の大学で学んでいた次の肢体不自由の男性は、大学のチャプレン(聖職者)に紹介された聖書の言葉に衝撃を受けたと話していました。

肢体不自由の男性は4年生の研究室の配属で壁にぶつかりましたが、受け入れが決まった研究室の先生とは、大学院を経て今でもつながりがあると話しています。

教職員との対話

教職員は本来的にもサポートを求めていい相手ですが、それでも、自然と良い関係を築けたことで支えになったと話した人がいました。
次の看護専攻の聴覚障害の女性は、在学中は教職員が大変さを見せずにサポートしてくれ、卒業の時にかけてもらった言葉も印象的だったことを話していました。

具体的な支援ではありませんが、次の内部障害の男性は、周囲の教員から掛けてもらった言葉がありがたかったという話をしていました。

教職員との関わり方は人それぞれですし、支援窓口の有無や、時代の影響もあるかもしれません。次の視覚障害の女性は、自分より前に視覚障害の先輩がいて、大学に働きかけることを引き継いで欲しいと言われたが、自分は個別に教員とやりとりする方が性に合っていたと話しています。

インタビュー時40代の車椅子の男性は、3年生に進学する時に医学専攻を希望した際、自分のアパートに医学部の教授が様子を見に来た時のエピソードを話していました。

内部障害と聴覚障害があり、看護職として就職した女性は、就職活動について担任に相談した際に、背中を押してもらった言葉かけがあったことを話していました。

自分に合う人を探す

大学の教職員は、学生の学びを支えるために大学にいる人たちです。しかし学生がただ受け身で待っていても、自動的に良い関係性が出来るわけではありません。ここでは、自ら積極的に自分に合う人を探したり、要望を伝えたりした体験を話した人を紹介します。

次の内部障害の女性は、特に障害とは関係なく、自分が話しやすい教員を探すようなことをしていた体験を話していました。

大学の学生相談室でカウンセリングを受けた人もいますが、次の精神障害の女性は、同性のカウンセラーの方が話しやすいと伝えて、交替してもらったことを話していました。

過保護とも思える対応

中には、障害のために大学や教職員から大事にされすぎたと話した人がいました。大学在学中に車椅子ユーザーになった肢体不自由の男性は、卒論で地方にインタビューに行くことを危ないからという理由で止められた体験を話していました。(このことは、別のテーマで話しています。)

またこの男性は、教員の態度に戸惑いを覚えた思いを話しています。

また国立の高専で学んでいた男性は、配慮が行き届いていたために周囲から孤立するような感覚を持った事を話していました(このことは別のテーマで話しています)。

理不尽な対応

次の肢体不自由の男性は、大学からのサポートが十分でなかったために友人に手伝ってもらっていた際、そのことで、職員から怒られるという理不尽な経験をしたことを話していました。

本来インクルーシブな社会とは、フォーマルなサポートがありながらも、インフォーマルで自然発生的なサポートやそれが成り立つ人間関係が存在する社会です。もちろん必要な支援体制の確保を目指す必要はありますが、大学や教職員側の柔軟性に欠ける態度や学生同士の助け合いを阻む言動は、インクルーシブな社会を進めるうえで大きな障害となるものと思われました。

年上のボランティアとの関係

障害のある人は、地域の様々なボランティアの人から支援を受けることがあります。子どもの頃から支援を受けている場合、親子ほど年が離れている人から支援されるという体験がある人もいます。次の視覚障害の女性も、地域のボランティアの人から大切にされたことを話していました。

2021年11月公開 2022年4月更新

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