授業や試験

授業や試験では、個人のニーズに合わせて、様々な合理的配慮が提供されています。ここでは、それぞれがどのような配慮を受けていたか、また自分で行った工夫や、うまくいかなかった体験について話されたことを紹介します。

授業のノートテイク

授業に関する配慮では、ノートテイクや授業の録音、資料の準備などの配慮について、話した人がいました。同じ内容の配慮であっても、受ける人の体験や思い、その中での工夫は人によって様々でした。

次の聴覚障害の女性は、ゼミも含めてノートテイクをつけていたが、支援者の配置を自分で工夫していたと話していました。

肢体不自由の女性は、大学からは限られた配慮を得た以外は友人にサポートしてもらっていて、その状態が職員に気を遣わず良かったと話していました。

中には、高校まで普通校だったため情報保障についての知識がなく、進学した大学に聴覚障害の教育について学ぶコースがあり、聞こえない先輩もいて、ノートテイクのことを教えてもらったという体験を話した人もいました。

授業の録音・マイクの使用

肢体不自由の女性は、最初ノートテイクを希望していましたが、大学との相談の結果、違う方法で配慮を受けることになったことを話していました。

障害学生に対する配慮の提供は、インタビューに答えた人の年代や、その大学に支援室があるかどうかで、ずいぶん違ってきます。40代の聴覚障害の女性は、自分で教員に特別なマイクをつけてもらうように依頼する以外は、自分でも依頼する配慮内容を思いつかなかったことを話していました。

上記以外にも、例えば弱視の女性は、授業をする教室ではいつも前の座席を指定席にしてもらっていて、そこに座っていると教員から声をかけてくれる場合もあったことなどを話していました。

配布資料の点訳やデータ化・パソコン通訳

視覚障害の男性は、配付資料の点訳は、全て大学にやってもらっていたことを話していました。

次の盲ろうの男性は、大学と大学院での授業の配慮について、状況や専門知識を持った人がいるかどうかで、受けた配慮が変わったという体験を話していました。

黒板の使用

数学専攻の視覚障害の男性は、黒板を使用するときの教員の説明や、自分が問題を解く時のことについて、話していました。

試験でのパソコンの使用・別室受験

大学では多くの試験が行われます。授業ももちろんそうですが、試験はより成績に直接結びつきやすいものです。学生自身は力を発揮できるように必要な配慮を受けて臨む必要がありますし、配慮を提供する大学側も、他の学生との公平性をより意識する必要があり、丁寧な建設的対話が重要になります。

次の識字障害がある発達障害の男性は、試験で、パソコンを使って回答をした経験を話していました。最初に教授に相談したところ、普段の授業ではなく試験についての配慮なので、一度大学の障害学生支援の窓口を通すように言われたそうです。

通信制の大学で学んでいた発達障害の男性は、対面での試験の際、他の人がいると集中できないという理由で、別室受験をしていたことを話していました。

試験の問題用紙の拡大・時間延長・課題の変更

視覚障害の女性は、試験の時の問題用紙を拡大するという配慮を受けていた話をしていました。

次の肢体不自由の女性は、先の視覚障害の女性と同じような問題用紙の拡大と時間延長に加えて、試験の時間割の変更という配慮を受けていた話をしていました。

試験やレポートを別の課題へ代替したり、内容を一部変更したことを話した人もいました。肢体不自由の男性は、センター試験(「大学入学共通テスト」に先行して行われていた試験)の受験上の配慮の基準が、大学の試験でも目安になっていたと話していました。

試験ではないですが、視覚障害の男性は、授業中に出された課題について、その内容を一部変更したことについて話していました。

上記以外にも、試験では、肢体不自由の人が大学院生に代筆をしてもらったことや、視覚障害の人がレポートを書く際、音声読み上げソフトで確認するので同音異義語などの漢字の識別が難しく、漢字の間違いは評価の際に問われなかったと話していました。

オンライン授業

2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行によって、多くの大学がオンライン授業への切り替えを迫られ、今ではオンライン授業も一般的になりました。しかし、感染症流行の以前から、特定の学生のためにオンライン授業を行っていた大学もありました。

大学1年生の時から体調不良が続いており、卒業の時に線維筋痛症と診断された女性は、体力的に大学に通うことが難しい時期に、個別にオンライン授業を受けていたことを話していました。

ンライン授業を受けていたこの内部障害の女性は、その後、通学する時期もありました。女性は、通学を選んだ時の思いについても話しています。

配慮の必要がなかった

また、発達障害の男性は、通常の大学の試験のやり方で、特別な配慮が不要だったと話していました。

た、吃音の男性は、発表の時などは言葉が出にくくて困ったが、自分なりの対処をしていた事を話していました。

授業や試験の配慮にまつわる課題

配慮を受けるに当たって困った経験をしたり、困った経験をした時の工夫や対処について、話した人もいました。

大学で学ぶことは、専門的な内容が増えてきます。肢体不自由の男性は、ノートテイクをしてもらうのに専門的な知識がある人を探すのが難しかったので、友人にノートをコピーしてもらった体験を話していました。

盲ろうの男性は、テキストデータに替えても情報が取りにくい内容があったことや、専門用語はあらかじめ授業の内容をイメージしてもらうような工夫をしていたと話していました。

発達障害の男性は、配慮の内容や障害に対する理解が、教員によってばらついたことを話していました。

合理的配慮の提供は、教育の目的や内容、評価など、学びの本質を変えないものであることが重要です。
(障害学生にまつわる「合理的配慮」の考え方・日本学生支援機構のホームページへのリンク)通常、科目シラバスの到達目標に、身につけることで単位が与えられる内容や、それが身についたかどうかを評価する評価方法が定められています。例えば、他の学生はその内容を行って評価をされているのに、障害のためにできないからその内容が免除されるというのは、定められた学びが行われていないことになり、学びの機会を失っているとも言えます。これは学びの本質の変更で、合理的配慮とは言えません。しかし今回のインタビューを受けた人の中には、試験が自分だけ免除されたという経験について話した人もいました。

今回インタビューに答えた40代の人の中には、授業で困っても配慮を求めるような時代ではなかったことや、在学当時、障害に対して的外れな配慮が行われたことを話した人もいました。

肢体不自由の男性は、ノートが取れないことが一番困ったと話していました。

聴覚障害の女性は、英語のリスニングの試験について、的外れな配慮のまま試験を受け続けていたことを話していました。

2021年1月公開 2022年4月更新

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