寮生活や一人暮らし
大学進学を機に、一人暮らしを始めることはよくあります。2020年に行われた調査でも、大学生全体の約半数が、実家以外に居住していました 。インタビューに答えた人も、大学進学が一人暮らしのきっかけになったという人が多くいました。一方で、障害のために一人暮らしのための準備期間が必要で、在学中や卒業後に一人暮らしを始めたという人もいます。一人暮らしでは、それまで家族が行っていた様々なことを自分自身で行う必要があったり、行ったことの責任を自分でとらなくてはならなくなったりしたことが話されました。
一人暮らしを始めたきっかけ
進学先の大学が離れていたので、一人暮らしを始めたという人が多くいましたが、逆に次の車椅子の男性は、親元から離れて一人暮らしをするために、自宅からは遠い大学を選んだ話していました。
また次の車椅子の男性は、親も自分も自分の時間を持てたら良いと思い、一人暮らしをしたいと思うようになったことを話していました。
寮生活における大学からの配慮
入学を機に大学の寮に入った場合は、寮生活を始めるに当たって、大学から配慮を受けたことを話した人もいました。入学と同時に寮に入った車椅子の男性は、多目的トイレの改修やドラム式洗濯機の設置など、ハード面で大学から支援を受けた体験を話していました。
また次の車椅子の女性は、食事の提供などについて依頼した話をしています。
一人暮らしの実際
それぞれの人が、実際に一人暮らしはどのように行っていたのか、一人暮らしをしてみて感じたことや周囲にサポートされた経験などを話していました。次の車椅子の男性は、寮にヘルパーを来てもらい身の回りのことをしてもらった体験を話していました。
次の車椅子の女性は、一緒に寮に住んでいる友人にサポートしてもらったことを話していました。
次の視覚障害の女性は、大学の教科書などを読んでもらう対面朗読の際に、レシピを読んでもらってそれで料理を作っていた話をしていました。
一人暮らしの壁
障害のある人が一人暮らしをしようとすると、現代でも様々な壁にぶつかることがあります。次の車椅子の男性は、具体的に一人暮らしの準備を始めてから実際にできるようになるまで、3年かかったと話していました。
一人暮らしの失敗談
一人暮らしは、これまで家族などがやっていたことでも、自分でしなくてはならないことが増えます。インタビューでは、一人暮らしでの困りごとや様々な失敗談について話してくれた人がいました。視覚障害の男性は、家を出る時に冷蔵庫を開けていってしまったらしく、家に帰ったら水浸しになっていたことがあったという話をしていました。
また次の聴覚障害の男性は、チャイム音が分からなかったという体験を話しています。
次の40代の視覚障害の女性は、家電を徐々にそろえていった話や、料理にまつわる失敗談について話をしてくれました。
一人暮らしで成長する
一人暮らしは、自分自身で行わなくてはいけないことも多くなりますが、インタビューに答えた人は多くの人が、徐々に自分のペースをつかんで行ったり、判断力がついたりして成長したと話していました。
次の精神・発達障害の女性は、初めての一人暮らしは大変だったが、2年生になる頃に楽になってきたと話していました。
次の視覚障害の女性も、徐々に、自炊と外食のサイクルを作っていったと言っていました。
発達障害の男性は、一人暮らしをしたことで、判断力がついたと話していました。
一人暮らしで自由を手に入れる
障害のために親に心配されたり介助されたりする経験を重ねてきた人たちにとって、家族と離れて一人で生活することは、一般的な大学生が一人暮らしを始める以上に、大きな変化をもたらすものかもしれません。一人暮らしで自由を得た、自分に自信がついたと話す人たちがいました。
大学在学中にインタビューをした次の発達障害の男性は、家族から離れた暮らしがとても自由であると話していました。
次の車椅子の男性は、一人暮らしをすることで親がいなくなっても最低限の暮らしはできそうだと自信を得たと話していました。
次の車椅子の男性は、一人暮らしをすることでいかに自分が何も知らないかを感じるとともに、自分にできることがあるという自信や満足感を得たと話していました。
次の、卒業後に一人暮らしを始めた車椅子の女性も、一人暮らしの自由は施設に入ったら得難いものだと話していました。
一人暮らしをはじめ、学内外の通学、学内での身辺介助、学外の私的な活動(自宅での生活、日常の外出)に関する障害者総合支援法による障害福祉サービス・福祉制度の利用については、大学の障害学生支援部署で情報提供がなされている場合もあります。リンク先は筑波大学の「障害福祉サービス・福祉制度の利用について」に関するページです 。自治体によって使える制度やサービスは異なりますが、自分の場合は何が使えるのか、大学や自治体に相談してみると良いでしょう。
2021年11月公開
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。

親に頼っている生活に先がないと思っており、一人暮らしをすることも一つの当時の自分の目標だった
子どもの頃は、親も自分もひとりの時間が全く持てず、それが10代半ばくらいでだんだん辛くなり、親と離れて暮らしたいという気持ちが芽生えていった
寮では自炊することになっていたが難しかったので、食事は男子寮の寮母さんから食事の提供を受けた。特別に持ち込みを許可された電子レンジを使うこともあった
週に2回、1回2時間、総合支援法のもとで宿舎にヘルパーに来てもらい、入浴介助と洗濯と掃除をしてもらった。食事は大学の食堂があり困ることはなかった
当時大学の教科書を読んでもらうのに地域の対面朗読のサービスを使っていたが、その最後の時間で、料理本のレシピや一人暮らし先に届く私信などを読んでもらっていた
宅急便が来たのが分からず困ったが、役所に相談してチャイムと連動して光るランプを教えてもらい解決した。疲れてやかんを火にかけたまま寝たという失敗もあった(筆談)
本格的な一人暮らしは大学が初めてで、自炊は大変だったが工夫もしていた。次第に、自炊に疲れると近所のごはん屋さんへ行くというサイクルもできて落ちついた
一人暮らしは全部が自己責任で、思った以上に判断力がついた。片づけが苦手で、一人暮らしは苦労の連続だが、母親から「こんなに強かった?」と言われたこともある
大学で上京して一人暮らしを始めた。家族とは仲が悪いわけではないが、一人暮らしはとても自由で、楽園のような思いで過ごしている
