演習や実習

大学の単位にかかわる授業には、講義だけでなく、学内での演習や学外での実習が含まれることがあります。特に学外での実習は、社会に出る前に、実際の現場で学外の様々な人とかかわりながら過ごす機会です。このページでは、それぞれが演習や実習においてどのような配慮を受けて学んだか、現場での実習に障害がどのように影響したかといった体験を紹介します。障害のために困難に直面し、自分について改めて考えたり、大変だったが自信をつけた出来事についても、話されています。

学内演習

学内の演習に関しては、看護師や医師の資格取得を目指す3人の人が、医療現場で必要な技術を学ぶ学内演習の際に、方法を変更したり、他の学生と一緒に行った体験を話していました。

教科書通りの手順ができなくても、(例えば患者さんの安全を確保することなどの)目的や原則を変更しなければ調整できることがあります。看護専攻の内部障害の男性は、「現場に出たら、障害があるからできないでは済まされない」と教員に言われ、患者さんの体位を変える技術について、工夫した体験を話していました。

看護専攻の聴覚障害の女性は、音量を調節できる聴診器でも聞こえない音もあったが、目で見て判断するなど他の方法で補うことを学んだと話をしていました。

医学専攻の肢体不自由の男性は、できないところは他の学生からサポートを得ながら演習を行った体験を話していました。

大学に入学を許可された時点で、学生には他の学生と同じように学ぶ権利があり、実習という一つの学びの場に関しても、必要な配慮を受けて学ぶことが望まれます。しかし実際には、それが当たり前になっていない状況もありました。

実習先探し

学外実習の実習先は、教育実習や福祉実習の場合、大学が調整することもありますが、自分自身で実習先を探す場合もあります。インタビューでも、障害のために実習先探しが難しかったと話した人が複数いました。

次の肢体不自由の男性は、母校での教育実習を断られ、最終的に違う学校での実習を行った体験を話していました。

40代の重複障害の女性も、当時、重複障害やてんかんを理由に実習を断られ、別の施設で実習をした体験を話していました。

視覚障害の男性は、実習先で受け入れてもらうのに、1年前からプレ実習を行った体験を話していました。

盲ろうの男性は、社会福祉専攻でしたが、福祉実習での受け入れ先を見つけるのが難しく、結局実習を辞めて他の選択肢を考えたと話していました。

次に、それぞれの実習場ごとに、どのような配慮を受けながら実習を行ったかを紹介します。

教育実習

学校現場で行う教育実習は、主に、児童や生徒を相手に授業を行う実習です。授業だけでなく、ホームルームなど1クラスを担当する場合もあります。実習先は大学が探して調整することもありますが、自分自身で実習先を探す場合もあり、中には自分の出身校である母校で実習を行う人もいます。実習中に必要な配慮についても、学生が自分で、実習先の人に依頼をして調整していくことが必要になる場合もあります。

肢体不自由の男性は、教育実習に際して、早くからとことん話して対応してもらったということを話していました。

学校で授業をする際は黒板を使う先生が多いですが、車椅子の男性は、黒板は使えないのであらかじめスライドを準備して、プロジェクターを使って投影して授業を行うことを相談して決めたという話をしていました。

また、「合理的配慮をめぐる大学との対話」のトピックにもありますが、実習に関しては、配慮の必要性を理解してもらうのが難しかったと話した人がいました。

聴覚障害の女性は、実習生の弱い立場で配慮を求めることも、限られた実習期間で現場の子ども達に説明して分かってもらうことも難しかったという話をしていました。また、肢体不自由の男性は、実習先では、困っているということだけではなく「こうしたらできる」という説明の仕方を工夫していたと話していました。

実習は、学内で学ぶよりも体力が必要になる場合があります。後に内部障害が分かった女性は、体力的な理由で、教育実習を断念した経験を話しました。

福祉実習

福祉実習は、主に障害のある人の施設等で行う実習です。生活援助をしたり、相談を受ける実習を行います。
福祉施設での実習では、現場で特定の配慮を受けたというよりも、自然な形でサポートをされた経験を話す人がいました。利用者にとって生活の場であることと、受け入れ側が障害のある人に慣れているということもあるかもしれません。

肢体不自由の女性は、知的障害のある方の通所施設で実習を行った時のことを話していました。

次の視覚障害の男性は、知的障害の人の施設で実習を行い、利用者さんに誘導してもらった体験を話していました。

病院実習

医療機関で行う病院実習のうち、看護の実習では、通常、実習先を大学が選びます。学生が必要な配慮などもあらかじめ大学の教員と相談をして、現場で調整をする形を取ることが多いです。実習では、何らかの障害や疾患を持つ少数の患者さんを担当して、その人の健康を支えるという役割について学びます。

在学中に交通事故で肢体不自由になった看護専攻の男性は、介助者をつけて実習に臨んだ話をしていました。

実習は、社会人になる前に実際の現場に出て、実際の社会で体験しながら学ぶ機会です。普段の教職員や友人相手とは異なる人間関係を、一から作る必要がある場合もありますし、日常とは違う環境に緊張するかもしれません。今回インタビューに答えてくれた人たちも、実習の種類を問わず、大変だったことや実習に臨む思い、意気込み、自分なりの工夫などについて話をする人がいました。

実習に臨む思い

大学や実習先が様々な調整をして実現した実習に、不安やプレッシャーを感じる人もいました。視覚障害の男性は、実習で何かよくないことをしてしまった場合を考え、不安だった思いを話していました

肢体不自由の男性は、実習で失敗したら後輩に迷惑がかかるという思いを持っていたことを話していました。

実習先での人間関係

実習では、教育実習先の児童や生徒、教職員、また福祉施設や医療施設で会う障害のある人や患者さん、現場の職員など、大学の中とは異なる人間関係ができます。インタビューに答えた人は、実習における人間関係についても、様々なことを話していました。

40代の視覚障害の女性は、当時は教職実習を終えても免許を取れるか分からなかったが、その時に母校の高校の教育実習先で会った生徒との交流について話していました。

聴覚障害の女性は、大学卒業後に行った言語聴覚士の資格を取るための専門学校の実習で、卒業後に働く場所の選択肢の一つとして、医療施設やろう学校、難聴の子ども達が通う施設など様々な場所に実習へ行った話をしていました。どこの実習先も難聴の学生が行くからといってネガティブな反応はなく、どうやったらきちんと言語聴覚士として働けるのかということを一緒に考えてくれたと話していました。

実習を通じた気づき

実習では、社会に出る前に現場に身を置くことで、自分の障害について考えたり、自分を理解する機会を得ることもあります。聴覚障害の女性は、看護の実習で、自分は患者さんの安全を守れないかもしれないと感じたことを話していました。

聴覚障害の女性は、言語聴覚士の実習で様々な場所を回ったが、総合病院の耳鼻科で自分自身の聞こえ方についてよく知る機会を得て、それが転機になったと話していました。

肢体不自由の男性は、福祉施設での実習を経て、障害のある自分が施設の利用者との関係に線引きがしにくいことを感じて、施設の職員に向いていないと感じたことを話していました。

インタビューに答えた人の中には、実習を経てできるようになったことがあったり、自信を持てた経験を話した人がいました。

教育実習を体験した車椅子の男性は、授業をする身として時間に遅れるわけにはいかないので、それまでは言えなかったが、電動車椅子で廊下を通るときに「通して下さい」と言えるようになったと話していました。

次の教育実習に行った肢体不自由の男性は、実習はとても不安だったが、自分が働くことをイメージできたと話していました。

医学実習に行った肢体不自由の男性は、実習の場で自分では難しいと思うこともあったが、自分が貢献できる場があるということに気づいた体験を話していました。

看護実習に行った肢体不自由の男性は、自分ができなくて申し訳ないと思うことが多かったが、担当患者さんとの関わりから、コミュニケーションを活かした仕事はできるのではないかと思えた体験を話していました。

祉実習に行った重複障害の女性は、実習は厳しかったが福祉の専門職として扱われ、とても良い体験をしたことを話していました。

2021年1月公開

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