病気とのつき合い方
クローン病のように原因が特定されておらず、闘う相手が見えない場合、いかにうまく病いと付き合うかという知恵が求められています。ここでは、インタビューに協力してくださった人たちが、長い経過の中で見出だしたそれぞれの病気との付き合い方や病気である自分との向き合い方について紹介します。
多くの人が「闘病」ではなく、「共存」という言葉やそれに近い言葉で病気との付き合い方について語っていました。
さらに、病気と自分との距離感をうまく保つことが大切であることを次の2つの語りが示しています。子どもの頃に診断を受けた女性は、病気と自分を切り離せなくなり、だんだん自分自身が嫌いになっていったと話していました。一方で、病気のことを、自分にとって「口うるさいおばさん」という距離感で表現した女性がいました。
病気である自分のことを「私自身はクローン病があっての私」、「病気は自分の特徴の一つ」と表現した人たちもいました。自分をどのようにとらえるかは他者との関係にも影響していました。
次の方たちは、病気をしてからかえって積極的になった、新しい道が開けた、あるいは健康な時より活発に動き回るようになったなど、前向きな変化があったことを話しています。
次に紹介する人たちは、家族や主治医の言葉がひとつのきっかけとなり、ポジティブな言葉を使ったり、やりたいことをやりたいと口に出したりして、自分の心をコントロールしていったそうです。
次の方の語りからは、病気とうまく付き合うためには自分一人で抱え込むのではなくて、周りの人に助けを求めることがとても大事だということがわかります。
次の方たちは、「治す」ということばかりにとらわれて、宗教や民間療法に頼ったこともあったが、先輩患者の話を聞いたり、ラジオのパーソナリティに影響を受けて、やっと病気に向き合うことができ解放されたということでした。
2019年6月公開
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
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病気は自分とセットであるものだから、「乗り越える」でもなく「受け入れる」でもなく、「付き合う」、「共存する」という感じだ
頑張って何とかなることもあるが、だめなときもある。体の声をちゃんと聴いてあげることが必要。病気と友達にはなりたくないが、口うるさいおばさんくらいには思っておけばいい
クローン病があっての私と思っている。周囲には、仲が良くなっていく段階で病気を伝えている。隠そうとは思っていないし、抵抗感はない
病気をコンプレックスだと思っていない。病気は自分の特徴の一つという感じで店の常連さんや友達に話をする。顔を出して語るなど自分ができることは積極的にやっていきたい
病気になる前は完全に受け身で誰かに言われた通りに生きてきた気がするけれど、病気になって、いろいろな本を読んでから、自分の思い方でどうにでもなるということに気付いた
病気になって始めたこともあったり、病気をしなければ出会えなかった人たちに出会えたりして、病気をして得をしたこともあった
今は寛解状態なので健康な人とも友達ができて、遠くまで遊びに行ったり、食事も色々なものを食べたり、健康な時より病気になったほうが活発に色々なことができているなあと思う
病気になる前は親が敷いたレールの上を歩いてきたが、現実に突き当たって、そのストレスで病気になってアラームが鳴った。それからは自分で物事を考えるようになった
高校時代はネガティブな性格だったが、母もつらい気持ちであることを知り、心理学の勉強をして、ポジティブな言葉を意識して使い、自分で自分の心をコントロールするようにした
主治医がきっかけで自分の意思を言葉にしてみると、叶っていくことがわかった。それからやりたいことを口に出すようになった
新興宗教や民間療法に頼り、治すことだけにとらわれていたときはつらかった。結局1人ではどうにもできず、病気に向き合っている人の話を聞いて、初めて受け入れることができた
宗教に頼って、しばらく病院に行かない時期もあったが、24歳の頃にラジオのパーソナリティーに影響を受け、宗教に対する考えが変わって病院での治療に戻った
