食事療法
クローン病の患者にとって食事の位置づけは非常に大きく、なかには薬よりも大きいと語っている方もいます。下痢や腹痛などのクローン病の症状は原則的に食事をとることによって起こります。従って絶食を含め食事制限をしている方はたくさんいます。またその時必要不可欠になるのがエレンタールなどの経腸栄養剤です。経腸栄養剤は本来薬剤として承認されたものですが、患者としては薬という認識よりも食事との関連で語られることが多いため「薬物療法」ではなく「食事療法」のトピックに収納しました。ここでは食べることへの様々な思いが語られています。また、このトピックには1年以上に亘る長期の絶食をした方の話が出てきますが、これらは生物学的製剤が出る前の話であり、最近は長期の絶食を勧める医師はいません。しかし栄養療法と薬物療法の併用は有用で、とくに小腸型の患者にとっては良好な長期経過が期待されます。なお長期の絶食は腸管を弱くし、出血や腸管の損傷につながる恐れがあるとの研究報告も出ています。
食べられないときどうするか?
人は食べられないときどういう思いをしてどういう行動をとるのか、ここには様々な対応をする人がいました。食べ物の情報を集めたり、食べ物の名前を書いたり、あるいはエステやスキンケアに走ることで気を紛らわせようとした人もいました。
一方もともと食にはこだわらないタイプの人もいて、次の方は「ポジティブ絶食」だったとおっしゃっています。
食事の工夫
一般的には脂質の多いものや食物繊維の多い食べ物はクローン病によくないと言われていますが、具体的にはどういう食物が良くてどういう食物が悪いのかということは人によって違いがあります。食べ物に関するそれぞれの工夫が語られています。
栄養管理の難しさ
他の疾患を併せ持っている人は、必要な栄養素や逆に摂ってはいけないものがクローン病とは相反することもあり、食事の選択とコントロールにとても気を使わなければならない場合があります。また手術によって小腸が短くなってしまって、栄養吸収がとてもむずかしい状況の方もいます。
経腸栄養剤(エレンタールなど)
エレンタールはそのまま飲むこともできますが、大量にとらなければならない場合や、味がまずいと感じている場合には経鼻といって鼻から管を入れて胃に直接流し込むという方法もあります。さらに、最近はゼリー状に固めて食べるという方法もあります。
なお、エレンタールで必要なエネルギーとほとんどの栄養素を摂取することができますが、セレンなどの微量元素と脂肪が不足するのでサプリメントや脂肪の点滴が必要となることもあります。
2019年6月公開
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絶食期間中にはテレビや雑誌で飲食店の情報を集め、食べられるようになったら全部行こうと思っていたが、油ものが多かったので、実際にはほとんど行けなかった
12歳の子どもにとって1か月の絶食はとてもきつかった。食べ物の名前を思い浮かべては画用紙に書いたり、食べ物の絵を書いたりしていた
小学校まで食べることが大好きなこどもだったので、食べられなくなったことが本当にショックだった。病気になってからは食べられるものを探して色々試した
会社の宴会ではなるべく自分が幹事になって店を決めるが、どうしても食べられないものが出てくることもあって、それを修行僧のように我慢しなければならないのはとても辛い
治療として飲み薬は出たが一番苦労したのは食事だった。何が良くて何が悪いかわからなかったので、最初は試行錯誤して自分に合う食事を探すのに2~3年かかった
海外で暮らす場合食事には特に気を付けないといけないが、最近はどこでも日本食が手に入るので基本は和食がいい。しかし、和食でも繊維質の多いものがたくさんあるので注意が必要
ニューヨークに行っていた時にホストファミリーからタヒチアンノニジュースというのを体にいいからと飲まされた。それがよかったのかわからないが帰国してから症状が改善された
腎臓が悪いので塩分は控えめにしないといけないが、一方ストーマで塩分がでてしまうので取らないといけない。カリウムも腎臓には良くないがカリウム値が低いのでそれも取らないといけない
クローンの栄養管理と糖尿の血糖管理を、インスリンと食事とエレンタールでバランスを取りながら行うのはとても大変だが、最近ようやく慣れてきた
腸の長さが普通の人の十分の一しかないところで、必要な栄養分を吸収するっていうことは腸にとってもチャレンジだと思う
最初はエレンタールだけだったが、数年前からエネーボという経腸栄養剤を併用している。エレンタールは完全消化状態で、エネーボは半分消化されたもの
1日の必要カロリー1800キロカロリーのうち1500はエネーボでとっているので食事はうどんとかお粥などの消化のいいものに限られていて、肉などはめったに食べない
経腸栄養剤を鼻から管を入れて寝ている間にとるようにしている。きちんととっていると体調もよくなるが、子育て中ということもあり、さぼってしまうと倦怠感がでてしまう
