病気と仕事のかかわり

若年性認知症は働き盛りに発症するケースも多く、インタビューを受けたほとんどの方が診断時には何らかの形で仕事に就いていましたが、その後、仕事を辞めています。ここでは、認知症と仕事のかかわりについて、職場での変調退職を巡って新たな働きの場を求めて という3つの視点から、ご本人、介護するご家族の話を紹介します。

 

職場での変調

家族が異変に気づく前に、本人が職場で支障を生じ同僚や上司から変調を指摘されたり、これまでのように仕事が上手くできないことで、自分自身でも不安を抱くようです。

職場での昇進と時を同じくして、本来得意な仕事が思うように出来なくなった男性は、それを機に急に体調がおかしくなったと言います。男性の妻は、これまで仕事の不安など口にすることのなかった夫が職場での出来事を頻繁に話すので、仕事が忙しすぎるのかと思ったそうです。

後に前頭側頭型認知症と診断された男性が定時より早く帰宅するようになり、妻はそれが病気につながっていると思わずに、仕事がうまくいかずに休みたいのかと思ったと話してくれました。

初診でうつ病と診断されたレビー小体型認知症の女性は、同じ抗うつ薬を飲み続けた6年間、体調にはずっと波があり、良い時にはパートで仕事に就き、調子が悪くなると不注意なミスをして離職するということを幾度となく繰り返したそうです。

公務員として調理関係の仕事をしていた女性は、空間認知障害のためゴム手袋を自分ではめられなくなるなど、仕事に支障を来すようになり、休職することになりました。苦手なことを手伝ってもらえれば、まだできることはあるので、職場の理解が大事だと話していました。

中には、もの忘れを指摘され、他の人のチェックを受けたり、意見を聞くようにすることで、かえって仕事の視野が広がったと話してくれた人もいました。

 

退職を巡って

発症や診断の時期によりますが、定年まで勤めることが出来るかどうかは、勤め人としての自分の納得や誇り、そしてこれからの生活を維持する上での年金にも影響するため、ご家族にとっても大きな関心事になっています。周りの助けもあって無事に定年を迎えられたという人、定年は迎えられなかったものの家族会のアドバイスで権利を主張したことで休職措置を認められたという人、うやむやのうちに辞めざるを得なかったという人もいました。

デザイン関係の仕事をしていた女性は、早い時期に空間認識機能に障害が出て、仕事を辞めざるを得なかったそうです。

次の女性は、最初うつ病を疑い、10年以上勤めたレジチェッカー(スーパー等のレジ係)の職を辞し、新しい職場では接客をしなくても済むようになったのですが、今度は得意なはずの数字が読めなくなってしまいました。(認知機能の変化:記憶・時間・空間・言語など:インタビュー本人13参照)。まもなくレビー小体型認知症と診断がついて早々に退職した心境を次のように語っています。

認知症と診断を受けて、いきがいであった仕事をやめてしまった男性は、認知症の診断を受けたこと自体を日々後悔していると話しています。

インタビューを受けた家族の方からは、職場の理解やサポートさえあれば何らかの形で仕事が続けられる可能性があるので、行政の支援を望む声もありました。

定年後、長年の夢を求めて単身で起業に踏み切った男性は、診断後もアリセプトを服用しながら事業を続けていましたが、計算が出来なくなる等の支障を生じ、自分の名前が書けなくなる前にと、妹の手を借りながら撤退の手続きを終えることができたそうです。( インタビュー介護者07プロフィール を参照)

 

新たな働きの場を求めて

退職後に、家族会や民間のサポートセンターの支援のもと、新たな仕事の場を得た人もいます。有償か無償かに関わらず、自分が必要とされる場があることが、その人の生活に張りを与えているようです。最初に、2組のご夫妻のお話を紹介します。家族会の事務の仕事、施設での介護の仕事と内容は違いますが、仕事が生活にリズムを生み、生きがいとなっているのを感じると妻たちは語っています。

若年性アルツハイマー型認知症の男性は、有料老人ホームで入所者やデイサービス利用者の介護をしています。妻は、夫の状況について、生活レベルでは機能が少し落ちてきたように感じるが、仕事をすることで意欲が増し、全体のレベルは維持されているように感じると話してくれました。

若年性認知症の人は障害者自立支援法などに基づいた就労支援を受けることが出来ます。
就労継続支援事業所として、原則として最低賃金を保障するしくみの“雇用型”A型、契約を結ばずに利用者が比較的自由に働ける“非雇用型”B型があります。(詳しくは、 厚生労働省 「障害福祉サービスの内容」のサイト をご覧ください)

脳血管性認知症と診断された男性は、週5日通う作業所(就労継続支援B型事業所)の1日の様子を話してくれました。

若年性アルツハイマー型認知症と診断された男性は、身体障害のある人とともに作業をする施設への違和感について、他の人から見れば自分も同じと映るかもしれないが、どうしてもそこでボランティアすることには抵抗があったと話してくれました。

診断後に、いきがいであった仕事をやめてしまったこの男性は、仕事に対する思い、サポートセンターへの感謝の気持ちを次のように話しています。

行政サービスとは異なり、民間の若年性認知症サポートセンターには、認知症の人たちが職員の見守る中、洗車や草むしり、花壇作りなど請け負った仕事をするところもあります。
若年性アルツハイマー型認知症と診断された男性は、自分たちが請け負った草むしりの仕事について次のように話しています。

2016年9月更新