本人からのメッセージ

本人からのメッセージでは、偏見や誤解を解いて少しでも正しく病気を理解してほしいという社会全体に対するメッセージ、こんな風に接してほしいという周囲の人へのメッセージ、そして、同じ病いの人へのエールともいえる同病者へのメッセージ、そして本人が勧める認知機能の低下を補う生活の工夫を紹介します。

 

社会全体に対するメッセージ

脳神経外科医であった若年性アルツハイマー型認知症の男性は、自分自身「アルツハイマーになったらもう何もできない」のだと思い込んでいたため、「どうして私が…」と葛藤の日々を過ごしていましたが、クリスティーン・ブライデンさんの講演を機に、自らの姿を通してアルツハイマーであっても普通に生きていけることを伝えたいと公表に踏み切りました。

若年性レビー小体型認知症と診断された女性は、レビー小体型認知症という疾患に対する理解が医師も含めた社会に乏しいために、うつ病や統合失調症に誤診されることが多く、正しく診断されても薬剤過敏性があるために処方された薬でかえって悪化することもあり、それに気づかなければ、さらに認知症自体が悪化したとして薬が追加されていくような悪循環が起こっていることに警鐘を鳴らしています。

また、ある若年性アルツハイマー型認知症の男性は、同じ認知症の患者といっても、一人ひとり個性があるので、同じ価値観を持つ人に出会って仲間を作れるような場を作っていくことが大切ではないか、と話しています。認知症という病気があっても、健常者と同じように、価値観を共有する人間関係の中で暮らしていけるようなサポート体制の確立が求められているのではないでしょうか。

空間認知に障害がある次の女性は、公共の場におけるトイレのデザインに工夫をしてほしいという具体的な提言をしています。自分でもいいトイレの見学を計画したり、他にどんなことを工夫したら認知症の人が助かるかを考えたりしているそうです。

 

周囲の人へのメッセージ

認知症と診断された人の多くが、特別な目で見てほしくない、これまでと同じように普通に接してほしいと願っています。ある高齢の女性は「あの人は認知症」と思われたら、何をしていてもおかしなことをしているように見られるのではないかと思って、知らない人に自分の病気のことは話したくないと言います。そして、普段から接していておかしなことをしていることに気づいた時に、それとなく教えてもらえたらありがたいと話していました。

一方、50代前半で若年性アルツハイマー型認知症と診断された女性の場合、かなり早い段階から自分自身が認知症であることを親戚や友人に告げ(「病気であることを伝える」インタビュー介護者04参照)、マスコミや講演を通じて活動をおこなってきました。そのことを、夫は周囲から同情されたり、特別視されたりしたことで、自分が認知症であることを隠さず、オープンにしたいという気持ちが逆に強まっていったのではないかと思っています。当事者である妻自身は、自分の体験を語ることは「普通だ」と話しています。

先のレビー小体型認知症と診断された女性も、かわいそうな人と同情はして欲しくないと話しています。

もうひとりのレビー小体型認知症の女性は、以前は家族会で、「突然怒鳴られたり怒られたりすると、頭が真っ白になって逆に混乱してしまう」など、本人の立場から介護する家族に避けて欲しい行動などを伝えていたそうです。今は、本人に自分らしく生きて欲しいから、家族にも「手を出しすぎないで欲しい」と、心を込めて話しているそうです。

 

同病者へのメッセージ

始めのうちは病気のことを知られたくなくて引きこもりがちだった、という若年性認知症の男性は、同じ病気を持つ人たちに積極的に外に出ていくことを勧めています。

レビー小体型認知症の女性は、副作用が出ないように慎重に医療を受ければ、決して右肩下がりに悪化していく病気ではないので、糖尿病のような慢性疾患の一つととらえて、同病者には希望を持って生活していって欲しいと語りかけています。

もうひとりのレビー小体型認知症の女性は、今までと変わらないと思っていると、「昔はこうだったのに…」と滅入る要因にもなると言います。むしろ認知症と診断がついたら、今の状態を生まれ変わった「第二の人生」と受け入れて、出来なくなったことにはちょっと手助けしてもらう、片意地を張らない気持ちの持ち方を勧めています。

 

認知機能の低下を補う生活の工夫

ここでは、本人が試してきた認知機能の低下を補う生活の工夫についてご紹介します。若年性アルツハイマー型認知症の男性は、iPadやパソコンなどのIT機器を生活の中に取り入れることで認知機能の低下を補う方法を、「認知症になったら第二の人生と考えるように」と勧めてくれた女性は、自分ができないことがあれば、人手を頼り、多すぎて把握できない状態なら把握できる数まで減らす、足し算、引き算の発想を具体的に示してくれました。

2016年9月更新