病気であることを伝える

ここでは、「病気を伝えること」にまつわる家族の思いを、病気をいつ、誰に、どのように伝えるか本人に伝えるか家族が感じる周囲の偏見と内なる偏見公表する若年認知症ご家族の思いの順に紹介していきます。

病気をいつ、誰に、どのように伝えるか

地域で助け合うのは人として当然のことと考えてきたので、迷わず伝えたと言う人やご近所や親戚、友人、職場にも家族が認知症であることを伝えておくことで、サポートが得られたと言う人がいる一方で、ご近所には早く伝えるべきだと助言を受けても、どう話せばいいのか迷っていると話す人もいました。その迷いは、若年発症であったり、一般的に認識されていないレビ-小体型や前頭側頭型の認知症では深まるようです。

前頭側頭型認知症となった夫を介護する妻は、近所の人に会っても、顔が分からず立ち尽くす夫の姿を見ても説明のしようがなく、店のトイレからトイレットペーパーを持ち出すような非社会的行動が繰り返されるのなら、いっそどこかに引っ越してもいいかと葛藤する胸の内を語ってくれました。一方、前頭側頭型認知症となった妻を介護する夫は、いつも立ち寄るお店や近所の人に、「脳が縮んでいるようだから、めまいがしたりすることもあるので見守ってください」と、お願いしているそうです。

一方、妻の診断を受けた後も、上司や同居している義母にも長らく病名を言えなかったという男性は、仕事を辞めるか辞めないかという選択を迫られるなかで、上司と義母に相談することができたそうです。

中には、認知症のご本人が自ら、自身の母親の告別式で親族に伝えたと話す男性介護者もいました。

他人に病気のことを知られたくなくて、ずっと家にこもりきりになっていた若年性認知症の男性(「診断されたときの気持ち(本人)」のインタビュー本人15介護者38を参照)は、病院で年配の方がボランティアをしているのを見て自分にも何かできるのではないかと思い、近所のお店に働きに出るようになりました。初めは病気のことを伏せていたのですが、1年くらい経ったときに妻が職場に「話してもいい?」と聞いたところ「いいよ」という答えが返ってきたそうです。

本人に伝えるか

誰に伝えるかという中には、診断を聞いた家族が本人にいつどのように伝えるかという葛藤も含まれていました。上記の、妻の認知症から逃げていたという男性は一人で診断を聞き、本人に伝えなかったため、妻も訳がわからずうろうろしてしまっていたと語っていました( インタビュー介護者14 を参照)。一方、妻を前に「もう治らない」と告知された男性は、その時は本人もきつかったと思うが、今は隠し事もなく話し合えるようになり、かえって良かったと話しています。

家族が感じる周囲の偏見と内なる偏見

母親の遠距離介護をしていた女性は、ご近所の人に認知症を知られたことで心ない発言をされ、介護のために実家に行くのが嫌だったと話しています。また、こうした偏見は周囲の人ばかりではなく、外出先で騒いでしまう母を恥ずかしく思い畏縮してしまう自分の中にもあり、後で、母に申し訳なく思って反省していると語ってくれた人もいました。