日々の暮らしを支える

ここでは家族介護者が日々の経験から生み出したり、困ったときに家族会で教えてもらった日常生活上の工夫やアイデアについての語りをご紹介します。できることを続けてもらう接し方を工夫する笑顔を生み出すケア 、これらはご本人に少しでもその人らしく良い状態を保って欲しいというご家族の強い思いから行われたものです。

 

できることを続けてもらう

アルツハイマー型認知症の母を介護する女性は、完璧ではなくとも少しでもできることをしてもらうことで、本人に自分も役に立っているという気持ちをもってもらえると話しています。

病期によって日常生活のあり方も変わっていきますが、若年性アルツハイマー型認知症の夫を介護する女性は、夫が退職後も妻の通勤時にターミナル駅まで見送るという擬似通勤を続けることで、生活のリズムを維持できていると話してくれました。

若年性認知症の人が不可解な行動をしていると、歳が若いこともありそれが病気によるものだと理解されず、疑いの目を向けられることがあります。若年性アルツハイマー型認知症の妻を介護する男性は、名前・住所や病状を書いたカードを妻に下げてもらうことで、何か困ったときには周りの手助けを得ながら一人でも外出できていると話してくれました。本人もこのカードがないと出かけるのがちょっと怖いと話しています。とかく本人が傷つかないように、人の噂にならないようにと外出を制限する方向に向かいがちですが、カードによって一人でも外出を続けることができていたようです。

病気になる前から意欲を持って取り組んできた趣味を続けることは本人の生きがいにもつながります(「認知症の非薬物療法・リハビリ・代替療法」の家庭で行なわれているリハビリテーション も参照)。一人でもカードを下げて外出するという若年性認知症の女性は、 落語絵本の読み聞かせのボランティアを続けることに意欲を持っており、夫もこの活動をできだけ長く続けさせてあげたいと尽力しています。そして、絵の好きな妻とともに絵画展に出かける男性の話をご紹介します。

 

接し方を工夫する

多くの家族介護者が認知症の人とどう接するかについての工夫について語ってくれました。認知症が病気であることを頭ではわかっていても、つい声を荒げて「なぜ、どうして」と感情をぶつけてしまうようなときがあります。若年性認知症の夫を介護する女性は、簡単ではないけれど、介護者自身が病気である本人の存在を受け入れ、それを態度で表すことが大切だと話しています。

また、周りに迷惑が掛かるような行動についても、わざと困らせようとしてやっているわけでないので、口頭で説明するだけでは覚えていられなくても、公式な注意書きのような貼り紙をすることで、納得してやめることがあるようです。

認知症の人が体験する幻視は介護する家族には見えないため、困惑してしまうことも多いのですが、やはり幻視を否定しないことが原則といえそうです。レビー小体型認知症の夫をもつ女性は、自分に見えないものは受け入れることはできないが、何が見えているのかを一緒に確認するだけでも、本人が動じなくなってきたと話してくれました。(「対処に困る言動:不穏・暴力・妄想・幻視」の幻視と替え玉妄想 を参照)

認知症の人は、認知機能が低下してきても、怖い、悲しいなどの感情はあるので、叱ったり否定したりしないことが、介護の原則のように言われています。若年性認知症の夫を介護する女性は、できないことは責めてはいけないが、やってはいけないことをやった場合には怒るのが我が家流だと話してくれました。介護情報を参考にしながら、病状や家族関係にあった取り込み方を工夫するように心がけているそうです。

認知機能の低下は過去と現在の記憶を分断してしまうため、一貫性のないつじつまの合わない話が増えていきます。若年性認知症の父を介護する女性は、症状が進む中、次のような工夫で親子の会話の時間が保たれたと話してくれました。

変わりゆく家族の言動を受け入れるには、まず自分が変わることが必要だったと多くの家族介護者が話しています。(「介護者の心の葛藤〜介護うつ、虐待に陥らないために」  を参照) 友人のアドバイスで、大変な状況に陥っても、「そう来たか!」と思うことで、対処の方法を考えることが出来るようになったと話してくれた人がいます。(インタビュー介護者26 を参照) ここでは、父親とひどいけんかをした後も、自分は女優だと気持ちを切り替えることで優しく接することができるという女性の話を紹介します。

 

笑顔を生み出すケア

化粧はきれいになることで意欲や自信をもたらし、マッサージはリラックスした状態にすることで不安や介護への抵抗を減少させる効果があるとして、認知症におけるリハビリテーションの一環として取り入れられています。(健康長寿ネット「認知症に対するその他の療法を参照」 )これらを日々の生活の中に取り入れて妻の介護をしている男性は、その効果を次のように語っています。

一方、若年性認知症の夫を介護する女性は、日々を穏やかに過ごすコツは「なんでも笑いに変えること」と話しています。