認知症と診断された家族を受け入れられない、きょうだいや親戚の理解が得られないなど、さまざまな理由から介護する人自身が精神的なストレスを抱え、心身ともに疲弊することは少なくありません。そんなときに、ありがたく感じられた周りからのひと言や介護保険導入につながった働きかけなどをご紹介します。
家族が認知症であることを周囲の人に伝えた方が良いとわかっていても、どのように捉えられるかが心配で、伝えられないでいる人もいます(トピック「病気であることを伝える」を参照)。次の女性は、主治医やケアマネジャーの勧めに従い、意を決して母親の病名を近所の人に話したところ、意外にも受け入れられ、ありがたかったと話しています。
一方、若年性認知症の夫を支える女性は、長年住み慣れた地域の人たちに夫の病気のことを伝えているので、自分が倒れた時に支えてもらえたし、夫に対しても普通に接してもらえるのがいいと話しています。
しかし、時には本人以上に介護を支える家族が孤立してしまう状況が生まれます。若年性アルツハイマー型認知症の父親を介護する女性は、心に響いた友人の言葉を自分も伝えるようにしているそうです。
友人からの言葉を紹介してくれた女性は、負のスパイラルに陥りそうなときに、今度はあなたが教える番だよと、介護の先輩が背中を押してくれたことで、自分の考えや知識を整理でき、気持ちも落ち着いていったと話してくれました。
インターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使い慣れている人たちは、コミュニティ型のウェブサイトを同じ問題に直面している介護を支える家族同士が出会い・共感する場として活用しています。
次に、周りの家族の気遣いで、主となって認知症の人を世話する家族の負担が軽減された例をご紹介します。同居している兄嫁が母の介護から丸一日解放される日を月に1回はつくるようしたり(インタビュー家族23「家族内の介護協力」を参照)、姉が父の介護に来てくれたりと、他の家族が介護を担ってくれることが介護する人の心の健康に良い影響をもたらしているようです。
主治医をはじめとする周りの勧めにより、介護保険を導入したことで救われたという介護を支える家族の話を次に紹介します。
世間体を考えて父の認知症を隠していたが、母までがんに罹り、近所の人の力添えでようやく介護保険に入ることが出来、そのサポートで助けられたと話してくれた女性がいます。
2021年7月更新
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