診断されたときの気持ち(家族介護者)

ここでは、家族の一員が認知症と診断されたときの気持ちがどうだったかについて語っている体験談を紹介します。今回、インタビューに協力してくださった人たちは、夫として、または妻、子どもや嫁といった立場で、認知症と診断された家族を介護していました。診断されたときの年齢は、50代から80代という幅広い年代にまたがっています。また、同居の家族ばかりではありませんでした。それぞれの立場や年齢などによって、認知症と告げられたときの気持ちが異なっていましたので、若年性認知症と診断された人の家族の気持ち高齢で認知症と診断された人の家族の気持ちアルツハイマー型以外の認知症という診断を受けたとき診断されたときの状況について の順で紹介したいと思います。

若年性認知症と診断された人の家族の気持ち

認知症と聞くと、高齢者の病気というイメージがあり、65歳未満で診断を受けた人たちの家族は驚きを隠せなかったとショックを受けていました。

夫が50代後半で認知症と診断された女性は、ショックのあまり、食事もとれず、後ろ向きのことばかり考えてしまい、うつっぽくなってしまったそうです。気持ちが回復するまでには1年くらいかかったと話していました。

また、母親と離れて暮らしていた女性は、母の診断を聞いて、思い出の中の母にはもう戻らないと思うと悲しみが1-2年は続いたと話していました。

妻が50代前半で「認知症で治らない」と告げられた介護者は、ショックで病気を認めたくなくて、逃げ続けてきたそうです。後に、この人は1人で介護できない状況となったことで周囲に話をし、妻の認知症に向き合わざるを得なくなったと話していました。( インタビュー介護者14 を参照)。

当初うつという診断で治療を受けていたが、なかなか治らないという体験をしていた人たちの中には、若年性アルツハイマー型認知症と診断がついて、やっぱりそうだったと思った人、診断されたことで病気を治す治療があるのではとほっとした人がいました。しかし、病気は受け入れても、病気に伴う生活の変化、関係性の変化を受け入れるのは難しかったと話す人もいました。

ある家族は、夫の様子からお祓いすることまで考えていたので、認知症と診断されて道が開けたと安心した瞬間があったそうですが、すぐに先行きの不安や心配が襲ってきたと語っています。それでも、結婚のときに交わした「互いに互いの人生の最高の脇役になろう」という約束を思いだして、認知症でも夫なりに輝けるよう支える決意をしたと話しています。

若年性認知症と診断された人たちの多くは、仕事を持っている人たちでした。病気に伴い、次々と心配なことが出てくるので、そうなったときに考えようと話していた介護者もいましたが、診断されて真っ先に将来のことが心配になったという声が複数ありました。特に、これから仕事はどうなるのか、家のローンをどうするのか、学費はどうするのかなど、経済的な面での心配が語られていました。

高齢で認知症と診断された人の家族の気持ち

一方で、高齢で認知症と診断された人の介護者の中には、親戚や周りに認知症の人がいたり、普段の様子から疑っていたりして、それほどショックを受けなかった、驚かなかったと語る人たちがいました。しかし、高齢であっても母親が認知症という診断自体は受け入れても、治したいという気持ちが強く、病気と闘おうとした人もいました。父が認知症になり、母は父のことをぼけてしまって情けないと悔しがっていたという話をしてくれた人もいました。

また、多少の症状はあっても外科医の夫が認知症になったと認めたくなくて、病気のことを調べるために何冊も本を読み、ついには納得したという人もいました。この女性は、妻として自分に落ち度があったのではないかと責任を感じたことがあったそうです。

他にも、過去を振り返り、認知症になった原因について考え、後悔の気持ちを話している人たちがいました。認知症の母親を介護する娘は、高血圧で倒れたときにちゃんと病院に連れていけばよかったと悔やんでいました。母親は病院嫌い・薬嫌いだったそうです。また、家事や介護、仕事のストレスが認知症の原因になったのでは、と語る人たちもいました。ある人は母親を山奥で一人暮らしさせたことについての悔いを語っていました。

しかし中には、よく運動をしていた両親を振り返り、認知症になるとは思わなかったと語る介護者もいました。

アルツハイマー型以外の認知症という診断を受けたとき

認知症には、アルツハイマー型のほかに、脳血管型、前頭側頭型、レビー小体型などの種類があります。そういった診断を受けた人の家族は、認知症に種類があったことを知らず、診断名になじみがなくて、よくわからなかったと話していました。脳血管型と聞いて、麻痺や言語障害といったことの方が気になったという家族や、前頭側頭型認知症と診断されたことで、夫のアルコール依存症や精神病が疑われるような言動が腑に落ちたと語った家族もいました。

レビー小体型認知症は、幻視が症状の一つとして特徴的な認知症です。ある女性の父親は、当初、脳血管型認知症と診断されましたが、幻視以外に記憶障害などが見られなかったので、認知症という言葉にぐさっときて強いショックを受けたそうです。そのため、彼女は父親に病名を言えなかったそうです。その2年後に別の医師の診察でレビー小体型とわかり、2年間のもやもやが晴れたということでした。

診断されたときの状況

次に、診断名や病状を告げられたときの状況について、若年性認知症と診断された家族を介護する人たちの話を紹介します。確認されることなく、職場の人が同席するところで突然、診断を告げられたという人もいました (インタビュー介護者03 )。できれば認知症本人である妻を外して話してほしかった、病名はいいとしても治らないことは言ってほしくなかったと語った人もいました。

一方で、夫婦の間で隠し事はしないと約束し、夫婦そろって診断を聞きに行ったという人もいました。診断を受けて帰宅すると、夫が自分の病気の資料を出してきたそうです。娘たちも一緒にその資料を見て、病気になっても思い出作りをして、家族で前向きに頑張っていこうと話し合ったということでした。