周囲の人とのかかわり(認知症本人)

人は社会的なつながりの中で生きています。当然、認知症のご本人にとっても、人間関係は生活の質を決定づける大きな要因です。一人暮らしの人はもちろん、同居する家族がいる人であっても、家族以外の友人・知人、近所の顔なじみの人、介護サービスの職員などの身近な人たちとのかかわりが、病気がもたらす不安や混乱に対処する力に影響を及ぼします。ここではご本人が感じている(家族以外の)周囲の人のかかわりのあり方についてご紹介します。

旧知の人とのかかわり

認知症で短期記憶に障害がある人でも、古くからの知り合いとは共有している記憶があり、相手もご本人の元気なころの人となりを理解していますから、比較的スムーズに会話できたり、緊張せずにリラックスして過ごしたりすることができるようです。生まれ育った町に今も暮らしている次の男性は、幼ななじみがたくさんいるので、安心して過ごせる、と話しています。

次の男性は以前からやっていたインディアカという室内スポーツを、認知症の診断を受けてからも続けています。最近は試合には出られないものの、仲間との交流を楽しむことを通じて、社会とのつながりを保ち続けています。

積極的に病いを公表する

以前から知っている人たちであっても、認知症であることを伝えていないと、話のテンポが合わなかったり、ちょっとしたミスを指摘されたりして落ち込むことになり、自分から内に閉じこもってしまう人もいます。そこで、思い切って自ら認知症であることをカミングアウトして、本音で心のうちを分かち合える人を探したいと話す人がいました。

次の女性も初めのうちは「恥ずかしい」という思いがあって、認知症であることを隠していましたが、スーパーで買い物の袋詰めや郵便局のATMで困ったときにも、思い切って自分の病気のことを伝えて、人に頼ればいいのだと思うようになったそうです。

自分の体験を語ることは「普通のこと」だと話す若年性認知症の女性の場合、かなり早い段階から自分自身が認知症であることを親戚や友人に告げ(「病気であることを伝える」インタビュー家族04参照)、マスコミや講演を通じて活動を行なってきました。そのことを、夫は周囲から同情されたり、特別視されたりしたことで、自分が認知症であることを隠さず、オープンにしたいという気持ちが逆に強まっていったのではないかと話していました。

医師という立場にあって、認知症の診断を受けるまでに非常に葛藤した男性は、むしろ公表することで自分自身にも新たな変化や出会いがあったと話しています。

レビー小体型認知症と診断された女性は、同世代で、周囲に症状を話している同病の女性と出会い、自分から話さなければ理解は得られないことに気づき、友人や家族から話し始めて、病気を公表する決断をします。その時の気持ちを次のように語っています。

配慮してもらいたいこと

認知症の人が社会とのつながりを保ちながら生活していく上で、周囲の人の配慮が必要なこともあります。認知症だからといってつい子どもに話しかけるような言葉遣いをしたり、「可哀想な人」と思ってしまったり、というのはよくあることではないでしょうか。それがどれほどその人を傷つけるかということを、周囲の人間は意識する必要があります。

2021年7月更新

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