病院にかかる

ここでは、認知症本人や家族が異変に気付いた後、病院にかかったときの体験を紹介しています。インタビューに協力してくださった方々の、診断を受けた病院にかかった経緯セカンド・オピニオン診断後に通院する病院と医師とのかかわり について知ることができます。

診断を受けた病院にかかった経緯

何かこれまでとは違う、ということに本人や家族が気づきはじめてから、診断を受けた病院にかかるまで、比較的長い期間を要した人たちがいました。当初、うつのように見える症状が出てうつ病という診断を受けていた場合、しばらくしてもよくならないので、ほかの病気や認知症を疑い、かかっていた精神科の医師の紹介や自分たちで別の病院を探すなどして、認知症という診断を受けた病院にたどり着いていました。特に若年認知症の人たちやその家族は、年齢的に最初から認知症を疑うことは少なかったようです。

診断までに長い期間を要した若年性のレビー小体型認知症の女性は、最初うつ病と診断され、抗うつ剤の副作用に悩まされる数年間を過ごしたそうです(認知症の薬物療法:インタビュー本人11 を参照)。症状が改善しないため、幻視などの症状からレビー小体型認知症を疑い、専門病院で診察を受けましたが、検査でははっきりとした診断がつかず(診断のための検査:インタビュー本人11 を参照)、最終的には症状から診断がついたということでした。

自らうつ病を疑いメンタルクリニックを受診した別の女性は、2年半ほどの治療を継続しても改善がみられなかったそうです。この女性の場合、幻視が見え始めたことから夫の勧めで認知症の専門医にかかり、検査の結果、すぐに若年性レビー小体型認知症と診断されました。

また、レビー小体型認知症の診断を受けた人たちの中には、最初、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症と診断されていて、正しい診断に行きつくまでに時間がかかった人たちがいました。ある女性の父親は、レビー小体型だとわかるまで2年間かかったと言います。

次に紹介するご夫婦は、夫(若年性アルツハイマーと診断)がうつ病として治療を受けていてもよくならず、4、5軒も病院を回ったと話しています。夫自身も、自分の症状がうつとは違うと感じたと語っていました。

本人や家族が受診しようと思った科はさまざまでした。うつ病を疑った人たちの多くは最初に精神科や心療内科を受診していましたが、認知症を疑って脳神経外科や精神神経科などを訪れた人たちや紹介を受けて認知症を専門とする外来(精神神経科等に設置されたもの忘れ外来、認知症専門外来など)を受診した人もいました。診断がつかないと別の病院を探して受診する人たちもいました。まずは持病でかかっている医師に相談したという人もいました。どこを受診してよいかわからなかったという人もいました。

現在、認知症の専門医(日本認知症学会認定)や高齢者の精神医学の専門医(日本老年精神医学会認定) のいる医療機関は各都道府県に複数あります。こうした専門の医師 を紹介されて、受診した人もいました。職場の人やデイケアの看護師に勧められて病院を受診し、すぐに診断された人たちもいる一方で、病院に連れていくまでに時間がかかった人たちもいました。ある家族は認知症を疑いつつも、葛藤があってなかなか病院に連れていけなかったと話しています。

家族が病院に連れていこうとしても、本人が抵抗したと話していた人たちがいました。ある家族は、かかりつけの医師に頼み、受診するよううまく言ってもらったそうです。次に紹介する家族介護者は、医師であった夫が受診したがらないので、症状を紙に書いて説得したと話しています。しかし、やっと受診した先で、検査入院を勧められたのが精神科の病棟だったので不安になり、外来検査にしてもらいました。結局、この病院でははっきりと診断を聞くことができず、知人の医師に依頼するに至ったということでした。

前頭側頭型認知症の夫を持つ女性は、病識がなく、説明しても理屈では動かない夫を病院に連れていったときの苦労について話しています。

また、異変に気づいて受診を勧めても他の家族が認知症だと認めたくなくて、病院に連れていきたがらなかったという人もいました。

セカンド・オピニオン

次にセカンド・オピニオンの体験を紹介します。認知症と診断されるまでに、複数の医療機関にかかった人が多かったため、あえてセカンド・オピニオンを聞いたという人はほとんどいませんでした。ある介護者は、医療者である家族が病院を選び、最初から専門医に診てもらって納得のいく診断を受けたので、セカンド・オピニオンを聞くことはなかったと話していました。一方で、次に紹介する若年性認知症の人の家族は、最初に受診した病院で受けた診断を受け止めることができず、専門外来にセカンド・オピニオンを聞きに行ったそうです。

診断後に通院する病院と医師とのかかわり

診断後の通院先として、上記の若年認知症の人の家族と同じような理由で、2カ所の医療機関を使い分けている人が他にもいました。また、診断後に通院先を変えたと話す人たちは、その理由を、通院するのに便利、治療内容、医師との相性などと語っていました。リハビリに熱心な医療者と本人の気持ちのずれから治療を見直す目的も含めて、あえて転院という選択をした家族もいました。

また、診断時の医師の対応で、通院する病院を選んだ人もいます。最初にかかった病院の医師が、認知症とは断定せずに様子見ましょう、と柔らかく言ってくれたので、認知症と宣告された病院ではなくて、元の病院に通うことにしたと話す人もいました。ある家族は妹が母親の診断時に医師からかけられた一言について話してくれました。

主治医を変えた若年性アルツハイマーの男性は、認知症の主治医選びは、よく当事者の話を聴き、一緒に考えようとしてくれることがポイントだと話していました。

地元のかかりつけ医に「5年で廃人になる」と言われた女性は、5年経って今も元気なところを見せてやりたいが、もうそこには通っていないと話しています。今は認知症に詳しい医師に、持病の薬も処方してもらっているそうです。

本人と医師のかかわりについても、いろいろな意見がありました。やはり本人との相性のいい医師にかかっていることが家族にとっての安心につながります。診断に疑問を感じるところがあると言いながらも、長く診てもらっていて本人のことをよく知っているかかりつけ医に、そのままかかっていると話す家族もいました。

認知症の父親をもつ看護師である女性は、本人がわからないからと言って娘の自分にばかり話さないでほしい、家族が必要としているのは、日常生活の具体的な助言だと話していました。

一方、レビー小体型認知症と診断された女性は、診断した医師が2ヶ月後に大学病院に戻ることになっていたため、通常なら症状の安定を優先するところ、直面する医療費の問題など生活面での安定確保を優先してくれたことが、とてもありがたかったと話しています。後任の医師も、患者の心に添った細やかな薬の調整を嫌がらずにしてくれているそうです。(認知症の薬物療法:インタビュー本人13を参照)

また、ある家族は受診時、自分のことでないので、医師に説明することが難しいと語っていました。インタビューに答えてくれた家族の中には、本人の前で言うと本人が怒るし、自分のことではないので、医師への説明が難しく、手紙を書いて事前に渡すようにしていると話した人がいました。手紙を見ると状況がわかるので、医師はおだやかに対応してくれたそうです。

2019年8月更新