臨床試験・治験は通常の治療とは異なる側面があるため、周囲の人に相談しづらかったり、相談した時に予想外の様々な反応が返ってきたりすることがあります。ここでは、臨床試験・治験への参加という選択肢を得た人が、周囲とどのようにコミュニケーションを取りながら参加・不参加の判断をし、参加中の期間を過ごしていったのかを紹介します。主に、家族や友人とのかかわりが語られていました。
まずは、家族とのかかわりについてです。自分の体調や治療の進み具合などをどの程度相談・報告するかは人によって様々です。通常の治療を進めていく中で臨床試験・治験の機会に遭遇することも多く、そのことをあまり特別視していない例も複数見られました。そのような場合、事前に相談などはしないとしても、自分の治療のことを後で家族に報告するように、情報共有という意味で家族に知らせることはあるようです。
また、次の人は、家族が高齢でもともと自分の病気のこともあまり話しておらず、治験のことも詳しくは話さなかったといいます。しかし、友人には治験の説明に同席してもらい、一緒に考えてもらった様子を語ってくれました。
現時点で効果が望める治療法がない家族を抱える立場では、なかなか参加条件に当てはまる臨床試験・治験がない中で、辛い思いを持ちながらも情報収集を行うことで家族を支えていました。
医療に関する専門知識を持っている家族がいる場合には、病院で十分に聞くことができなかったことや不安や迷いを家族に相談している人もいました。時には、家族の後押しによって治験に参加する場合もあるようです。
臨床試験・治験に参加する前には、本人はもちろん家族も「何か起こったらどうしよう」という思いを持つこともあり、様々な反応を受け取ることがあります。場合によっては家族の中でも反応が異なることもあります。
次の人は、家族の思いに配慮して、何か起こった時にも家族がある程度納得できるように、自分の意思をきちんと家族に伝えてから参加するべきだと語っています。
近年では、「臨床試験・治験」という言葉そのものは広く知られつつありますが、その内容まで深く理解されているとは言えず、多くの人にとって臨床試験・治験は身近なものではないのかもしれません。そのような状況では、それが通常の治療と異なること=実験段階であること=危険という理解につながり、周囲から心配の声を受け取ることもあるようです。
次の人は、自分の息子をコンタクトレンズの臨床試験に参加させていました。自身も臨床試験・治験に関する専門知識を有していて、周囲の医療従事者の臨床試験・治験に対する反応が興味深かったと語りました。専門知識をもっていることと、実際に臨床試験・治験に被験者として関わることとは別のことのようです。
2016年11月公開
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