参加できなかった理由/参加しなかった理由

臨床試験・治験に参加した人がいる一方で、参加を希望したけれどできなかった人や参加をすすめられたけれどしなかった人もいます。ここでは、参加できなかった/しなかった人たちの気持ちを紹介していきます。

参加したかったのに参加できなかった

臨床試験・治験に参加したいと思って応募したのに、参加できなかった人たちはどうして参加できなかったのでしょうか。そもそも、臨床試験・治験に参加するには条件があります。参加条件は、臨床試験・治験によってさまざまですが、参加を希望する人の年齢、病気の状態、これまでに受けた治療や治験などに関して、細かい条件がつく場合があります。そのため、臨床試験・治験への参加に同意しても、その後の診察や検査の結果、担当医師の判断によって参加できなくなることもあります。

次の人はネット上の臨床試験・治験参加者募集の情報に載っていた選択・除外基準(※)を見て、参加できると思って応募したところ、郵送で血液検査を受けるように指示され、その結果、白血球の型が異なるという理由で、ワクチン療法に参加することができませんでした。

※選択基準はその基準に該当すること、除外基準はその基準に該当しないことが、参加の条件となります。詳しくは専門家インタビューを参照してください。

次の人は同意書に署名してから半日がかりで受けた検査で、条件に合わないことがわかって、あきらめざるを得ませんでした。

次の人は線維筋痛症という慢性の痛みを伴う病気で悩んでいて、あまりの痛さに「死にたい」と思ったことがありました。その後、新薬で痛みから解放されるかもしれないという期待感を持って治験に応募したのですが、問診で「死にたいと思ったことがあるか」と聞かれて、正直に「ある」と答えたことで、治験対象者を除外する基準に引っかかってしまいました。

しかし、この人は納得いかず、もう一度別の治験募集の広告を見て、電話で参加申し込みをしましたが、今度は「はっきりとした理由なく」断られてしまいました。治験の除外基準についてきちんとした説明もなく断られたことに強いショックを受けたこの女性は、改めて治験を実施している会社に電話を掛け直して、説明を求めましたが、そこでも参加や除外の基準については教えられないといわれました。

この女性が治験を実施している会社にまで問い合わせしたのは、「死にたいと思うほど痛い病気」だからこそ新しい薬が必要なのに、「死にたいと思ったことがあるかどうか」を除外基準にしているのは、薬の作り手側が患者の苦しみを本当に理解できていないのではないか、という疑問を抱いたからです。臨床試験・治験の実施に際しては、選択基準や除外基準の設定も含め、試験の計画を立てる段階で、患者の意見を反映させる仕組みづくりが必要なのではないでしょうか(「関係者へ伝えたいこと」インタビュー20も参照)。

次のご夫婦は、アトピー性皮膚炎に対する新薬の治験の新聞広告を見つけ、当時小学生だった息子さんの症状が良くなれば、という思いから、治験をおこなっている病院に出向き診察を受けましたが、2回目の診察のときに、きちんとした説明もなく、治験ではない通常の治療をするといわれて落胆したそうです。

参加を打診されたが参加しなかった

このように参加したくても参加できずに納得できない思いをした人がいる一方で、参加を打診されながら断った人もいます。次の人は、交通事故で脊髄を損傷して車いす生活をしており、当初は再生医療の臨床試験に参加したいという思いが強く、自ら説明会に出向くなどしていましたが、個別に医師の説明を聞いたあとで、次第に気持ちが変わっていったそうです。その手術の方法では思ったような回復が見込めないことと、別の治療法にも関心を持っていたことに加え、大学の用事が受診日と重なってしまうことが何度か続いたことで、足が遠のいて行かなくなってしまった、ということです。

この人は、自分が臨床試験にそれほど夢中になれなかったのは、事故から数年経って、大学にも進学し、社会生活もできるようになって精神的にも強くなり、「新しい医療にかけるだけ」ではなく、冷静に考えることができるようになっていたからかもしれないと話していました。

2016年11月公開