慢性の痛みの特徴
痛みは主観的なものであり、体験している本人にしか痛みを評価することができません。ここでは、インタビューに協力してくださった方々が自分の体験している慢性の痛みをどのように表現しているかを通して、慢性の痛みとはどういうものかを紹介していきます。
痛みは主観的なものだが、確かにそこにあるもの
痛みは、“組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験である”と、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain)が定義しています。インタビュー協力者は痛みという体験が本人にしかわからないものであり、外からはわからず、言葉で伝えることの難しさ、確かに痛みがあるのに信じてもらうことの難しさを感じていました。
当事者が語る慢性の痛みの特徴
先ほどの術後の痛みのように、痛みがはじまる明らかなきっかけの有無にかかわらず、多くのインタビュー協力者が語ったのは「痛みがなかなか治らない」、「どんどん強くなる」、「全身に広がる(痛む場所が増える)」という特徴でした。
線維筋痛症と診断されたインタビュー協力者たちは、時間の経過とともに、痛みが強くなり、全身に広がっていったことを語っていました。
痛みの原因となる複数のきっかけ
さらに、繰り返し痛みの原因になるような事故や怪我、病気を体験し、それぞれに生じた痛みが影響し合って、増強したり、体のさまざまな場所に痛みが移っていったりした人たちもいます。痛みが痛みを呼んで体中に広がり悪化していくことも稀ではありませんでした。
なお、長期化する痛みが心理面や日常生活に影響を及ぼすことも、慢性の痛みの特徴として多くのインタビュイーから語られていました。これらについては、他のトピックを参照してください。
2018年7月公開
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本当に痛いのか聞かれるが、痛いということしか言えない。言葉でうまく伝えられないのが残念
痛みを感じているのは私なので、私にしかわからない。共有できないし、理解されない。慢性的に痛いのが普通で、外からはわからないので、説明しても伝わらない
見た目は普通だが怠けているのではなく本当に動けない。理解してもらうには、自分に乗り移って感じてもらうしか、わからないような関節の痛み、筋肉のだるさがある
朝起きたら、腰が痛くて起き上がれず、箪笥につかまりやっと立ち上がった。整形外科やマッサージに行ったがなかなか良くならなかった。それから25年痛みが続いている
小学生のときから激しい肩こりと頭痛があり、20代でその痛みが全身に広がり、手の指先、足先、関節の痛み、内臓の痛みまで出て、30代で痛くて寝たきりとなってしまった
皮膚炎を繰り返しているうちに感染症がひどくなり、皮膚炎が治っても右手の痺れと痛みは消えず、肩や首なども痛くなった。線維筋痛症と診断がつき、気持ちは落ち着いた
平成5年に車にはねられ頭部を打撲。痛みが頭→背中→腰へと移っていき、その後も複数回の事故や足の骨折をし、手術を2回受けた(次のクリップへ続く)
