診断をめぐる思い

長引く痛みの要因は、複雑に絡み合っており、なかなか診断がつかない場合も少なくありません。人によっては、いくつもの医療機関を訪れて検査をしても診断にたどり着かない人もいます。ここでは、診断を受ける過程でどのような体験をしたのかを含め、診断を受けたときの気持ち診断に対する疑問・違和感病名に対する思いや考え診断がつかないままでいることへの思いの語りを紹介します。

診断を受けたときの気持ち

ほとんどの人が診断名を知るまでに数カ月~数年を要していました。関節リウマチの女性は最初に訪れたクリニックで五十肩ではないかと言われ、痛みが増して別のところに行くと腱鞘炎ではないかと言われたそうです。このようにいくつもの受診を通して、診断がついたときの語りを紹介します。先の女性は関節リウマチという自分ではよくわからない診断名を聞き、ショックを受けたそうです。また、後縦靭帯骨化症と診断された女性は、医師に家族を呼ぶように言われ、「大変な病気です」と告げられたことを話していました。

一方で、約4年かかってシェーグレン症候群という診断にたどり着いた女性は、難病であったとしても、病名がわかって救われたと話し、別の線維筋痛症の女性は奇跡だと思うと話していました。

他にも、長いこと病名のわからなかった人たちは、確かに病気であることがわかり、原因不明で苦しんだ期間を思いかえしたと話していました。

診断されたことで、痛みの原因がわかって治療できるという期待とこれからの不安を感じた人たちもいました。

次の女性は腰痛が始まってから、線維筋痛症と診断されるまでに20年近くかかったそうです。その間、全身に痛みが広がり、内科や整形外科では検査しても異常が見つからず、心療内科に通い始めましたが、そこでも納得できる病名がつかず、3年半前に受診した別の心療内科で線維筋痛症と診断されます。これまで心理学などを勉強し、自己努力をしてきたことは何だったのかと複雑な思いと先への不安を語っています。

診断に対する疑問・違和感

インタビュー協力者の中には、診断されても、何か自分の状況に合わない、本当の原因かとうかわからないと診断に対する疑問や違和感を持ったことがあると話す人たちが少なくありませんでした。

ある女性は、どこの病院で検査しても消化器の器質的な異常はないのに、腹痛や下痢は改善せず、機能性の障害と診断され、精神科受診を勧められたといいます。

脊柱管狭窄症と診断された男性は、腰痛で近所の整形外科に通院していましたが、毎回、同じ湿布や薬の処方で緩和せず、不信感をもって、通院を中断したそうです。その後、膀胱がんが見つかり、治療後1-2年しても前の痛みが軽減せず、パーキンソン病の疑いで改めて神経内科を受診したということでした。妻も通院しても痛みがよくならない夫を見て、脊柱管狭窄症は何か違うような気がしていたそうです。

病名に対する思いや考え

疑われる病気に関する既存の検査で異常が出なかった人たちの中には、「慢性難治性疼痛」、「慢性疼痛障害」といった病名が伝えられた人たちがいました。

20代の頃に婦人科で子宮内膜症と診断されていた女性は、痛みが下腹部から腿の付け根や足の裏まで広がり、整形外科で椎間板ヘルニアと診断されました。しかし、「確かに椎間板ヘルニアはあるにはあるけれども、ここまで痛みが出るほどの大きさではない」と言われ、それからいくつもの病院を転々として検査をしましたが、痛みはよくならず、検査でも異常が見つからず、「疼痛障害」という病名がついたということでした。

次の女性は、何の病気に対して向かっているのかわかるので、「慢性難治性疼痛」という病名でもあった方がいいと話していました。

慢性の痛みのメカニズムは今まさに解明が進んでいるところで、新たな診断名や診断基準が打ち出されることもあります。CRPSと改訂された病名がしっくりこないという女性は、多様な背景と病態がある慢性の痛みを一括りにすることの懸念も語っていました。

診断がつかないままでいることへの思い

病名がいまだはっきりしていない人たちもいます。次に紹介する人たちは診断がついていなくても病名がどうあれ、自分の痛みへの向き合い方や改善方法に重きを置くことが大事だと話していました。

15歳で痛みが始まり、原因も病名もわからず15年以上痛みとともに苦しんできた男性は、痛みの記憶が脳にこびりついているのではないかと指摘され、自分のような病気を広めたいと署名運動を始めたそうです。

病名がわかれば、治療の方向性が見えて安心できる面もあります。しかし、痛みの診断は難しく、すんなりと確定診断がつかずに、いくつもの病名の可能性が示される場合もあります。300もの病気の診断を受けたことのある女性は、そういったことで揺らがず、自分の体をわかってほしいと話していました。

2018年7月公開

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