日々の暮らしを支える

慢性の痛みを抱える人は、からだの自由が利かなかったり、仕事や学業、家事や育児に影響が出たりして、日々の暮らしの中で家族の支援や介助が必要になることもあります。ここでは、インタビューに答えてくださった5人の家族が、どのような支援を行っているかをご紹介します。

家族がどこまで手を貸すべきか

痛みが強くて自由に体が動かない場合、食事の支度や入浴、排せつといった必要最小限の活動にも介助が必要になる場合があります。しかし、介助の専門家ではない家族にとっては、介助するにも何をどこまでやったらいいのか、と戸惑うこともあるようです。次の女性は足の痛みでトイレに歩いて行けない母親が、一人で這ってトイレまで行くのをただ見守っていたことを「恥ずかしいんですけど」と前置きして話しています。

その後、この女性は母がなるべく自分でやれることはやりたいと思っていることを感じ取って、あまり手を出し過ぎないようにしていると話しています。

次の女性も慢性の痛みを抱える夫が自分でやろうとしていることに対して、「ここからここまでは痛くてできないからやってくれ」と言われたときに、手を出すようにしているのだそうです。そうすると痛みがあっても自分が介助するときは、力のある息子が介助するときよりも自発的に動いてくれるので、不思議とそんなに力が要らない、と話しています。

他の家族の世話を引き受ける

痛みを持つ人が、主婦のような、もともと他の家族のケアをする立場の人である場合、その人が動けなくなることで、その人のケアだけでなく、その人のケアを受けていた人の面倒も見る必要も生じてきます。次の女性は、娘が産後1年ほどで痛みを発症したため、初めは通ってサポートしていましたが、途中から孫を引き取って育てる決意をしたと言います。

次の女性の母親は父親と二人暮らしをしていたのですが、痛みが出て動けなくなってから、父親が認知症になってしまいました。母が痛みのために寝ていることが理解できずに、すぐに怒りだす父から母を守るため、父をデイサービスに通わせることにしました。そうやって二人を引き離すことができたのは、母にとっていいことだった、としています。さらに、別のところでは父が外に出て迷子になることを繰り返したのは、父もいつもそばで「痛い、痛い」と言っている母から逃れたかったからではないか、と話していました。

病気・治療・医療機関の情報収集

日常生活の介助・支援のほかに、本人に代わって病気や治療、医療機関についての情報収集をしていたと話す家族もいます。テレビ番組や書籍、インターネット、さらには個人的なつながりを通した口コミなど、家族は様々な情報源を駆使して情報集めをしています。次の男性は、妻が頚髄を損傷して半年ほど経ってから麻痺している足に痛みが出たときに、インターネットで調べて、脊髄や頚髄を痛めた人で痛みがある人がかなりいること知ることができたので、妻が適当なことを言っているとは思わなかった、と話しています。

原因不明の痛みに襲われた娘が何をやってもなかなか回復の兆しが見られなかったという次の女性は、藁をもつかむ思いで、家族や親戚、知り合いから医療機関の情報を集めて、娘に受診を勧めていました。

一方、次の女性は自分が情報を求めるのは、病院や治療法の情報が得たいからではなく、あえて痛みのある患者さんの情報を夫に伝えて、本人が一人で殻にこもってしまわないように、という思いからだと話しています。

薬など治療をめぐる意思決定に積極的にかかわる

家族が患者に代わって情報を探すのは、がんやアレルギー疾患などの病気でもよくあることかもしれませんが、慢性の痛みを持つ人の家族に特徴的なのは、薬や神経ブロックなどの治療法をめぐる意思決定に積極的にかかわっていることです。次の女性は痛み止めに睡眠導入剤2種類を処方されていた母親が昼間でも寝てしまうことに気づき、自分でもいろいろ調べた結果、主治医と話し合って薬を飲むのをやめた(*)と話しています。

*急にお薬をやめると危険な場合もありますので、医師と相談しながら減薬していくことが大切です。減薬については「薬物療法」のページもご参照ください。

このように家族が医師と治療方針を話し合うのは、本人が高齢であるということだけがその理由なのではなく、本人が薬に依存することを家族が強く懸念することが影響しているようです。上述の女性も睡眠薬がないと寝られないという母親を心配していました。孫を引き取って面倒を見ていたという女性は、「また来たの?両親が甘やかしてるの?」と言われながらも当時30代の娘の精神科の通院に付き添い、やはりそこで出されている薬の量や種類に疑問を抱き、転院先の病院でその薬をやめてほしいと直談判したと話しています。

家族同士、どう支えあうか

インタビューでは、痛みを持つ本人だけでなく、その人を支える家族を、他の家族が協力し合って支えている様子がうかがえました。幼い子どもを抱えて原因不明の痛みに苦しんでいた次女を、家族ぐるみで支えた女性は、次女の夫や長女、さらには長女の子どもまでが、「あ・うんの呼吸」の協力体制を作っていたと話していますし、母親の診断がつかない痛みに対して、何もしてあげられないことを空しく感じていた女性も、いとこやおじの気遣いが母にとって励ましとなり、自分の精神的重圧も一瞬軽くなったと話していました。

2018年7月公開

ページの先頭へ